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誰でも苦手な人には会いたくないものだ。
-114 国の一大事-
結愛は聞き覚えのある女性の声にビクビクしながらも、声の方向へと振り向いた。やはりそこにいたのは苦手な叔母の美玖であった。
結愛「お・・・、おば様。ご機嫌麗しゅう。」
美玖「あんたって本当に表裏がある子だね、裏で何言われているか怖くて仕方ないよ。」
結愛は一刻も早くその場から離れたかった、社長室から少し離れた所に設置してあるサンドバッグに殴りかかりたかったからだ。ただ自分より強大な魔力を持つ叔母に心中を読まれてしまいそうなのでぐっとこらえて例の画像を見せる事にした。
結愛「どうやらこの集団の行為により当社が疑われている様です。」
美玖「こりゃかなり悪質だね、追跡はしていないのかい?」
結愛「黒ずくめの恰好な上に夜ですから偶然移りこんだのがこの一瞬だけだったらしく・・・。」
美玖「赤外線カメラにしたら映るんじゃないかい?」
確かにそうだ、しかしカメラを国中に張り巡らせているので付け替えにはかなりの日数と予算が必要な上にデカルトの許可が必要になる。勿論国王にも報告はするつもりだが。
結愛は咄嗟に嘘をついてもすぐにバレそうなので正直に言うことにした。
結愛「今からデカルト国王に連絡して動こうかと。」
美玖「どうして国王に連絡する必要があるんだい?」
結愛「このカメラは国王の許可の下で張り巡らせてあり、ダンラルタ王国の王宮にある監視室でも映像が見える様にしてありますので。」
美玖「ふーん・・・。」
美玖は光明から画像のコピーを受け取ると、『瞬間移動』で自分の部署へと帰って行った、安堵の表情を見せた結愛は滲み出て来た汗を拭うとデカルトのいる王宮へと電話をかけた。
因みに結愛が持っている番号はデカルトの部屋に直通のものなので・・・。
デカルト(電話)「もしもし。」
結愛「もしもし、突然のお電話申し訳ございません。貝塚財閥代表取締役社長の貝塚結愛でございますが。」
デカルト(電話)「ああ、結愛さんですか。先程は大変でしたね。」
結愛「いえいえ、あの時はお越し頂き有難うございます。」
デカルト(電話)「何を仰いますやら、私共の国での話なで当然の事をしたまでですよ。」
国王の腰の低さには本当に驚かされる。
デカルト(電話)「それで、またどうされました?」
結愛「実はと申しますと、国王様に許可を頂いて国中に張り巡らせているカメラに怪しい集団が映っておりまして、その集団が下級魔獣を麻袋に入れて何処かへ連れて行っている様なのです。」
デカルト(電話)「何ですって?!それは国の一大事じゃないですか!!」
魔獣の捕獲・誘拐は当然「魔獣保護条例違反」となる、しかもまだ人化できない下級魔獣だと罪は重くなり極刑は免れない。
結愛「それでなのですが、ご覧頂きたいものがございますので今からそちらにお伺いさせて頂いても宜しいでしょうか。」
デカルト(電話)「勿論です、お待ちしております!!」
電話を切った瞬間、結愛と光明は秘書に緊急で外出すると伝えてダンラルタ王国の王宮へと『瞬間移動』した。到着した先でデカルトが自ら器を温めて紅茶の準備をしていた。
デカルト「早いですね。」
結愛「一刻を争いますので。」
デカルト「取り敢えず落ち着きましょう、ハーブティーを淹れましたのでどうぞ。」
結愛達は手渡された紅茶を1口啜った、デカルト自ら育てたハーブの香りが口中に広がり夫婦は落ち着きを取り戻した。
光明「国王様自ら、ありがとうございます。」
デカルト「いえいえ、それで私に見て欲しい物とは?」
結愛「こちらなのですが・・・。」
結愛が先程の静止画像を見せると、デカルトは細かく震えだした。
デカルト「こいつらめ・・・。」
こんなに怒ったデカルトは初めてだ。




