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いよいよ

 


「どうかされました?」



 皆のあまりのざわつきが気になってレイティアが声を掛ける。一体どうしたというのだろうか。



「エドワードさんが、会話してくれたんです!」

「はい?」

「いや、あのエドワードさんが誤解されるとアレなんですが…。エドワードさんて無口なんですよ。真面目って事です。私語はしないみたいな?」

「あぁ、そうですよね。任務についてはお話ししてくれましたが」

「えぇ。だから今みたいな、任務外の世間話は聞こえてないんじゃないかってくらいスルーなんですよ。それが今、会話に参加してくれた上に俺の事フォローしてくれて…めちゃくちゃ嬉しかった!」



 レイティアも口数が少ない人だとは思っていたが、仲間に対しても徹底していたとは思わなかった。それがヘンリーの言うように会話に参加してくれたのは、もしかしたらヘンリーだけでなくレイティアへの励ましの意味もあったのかもしれない。やはり騎士達は優しい人ばかりだ、とレイティアは思った。



 そしてチラリとエドワードの方を見ると、表情は何も変わらないように見えるがほんの少しだけ耳が赤いような気もする。会話しただけで、照れるような事は無いのにと思い微笑みを向ける。すると何かが伝わったのか、エドワードが微かに頷いた。…表情はそのままだが。



 出発する時は気持ちが沈んでいたレイティアだったが、皆との会話でそんな事は吹き飛んでしまった。それも、レイティアを励まそうとしてくれた気持ちが伝わってきたからかもしれない。途中で話は逸れはじめたが、そんな会話も楽しかった。



 家族以外とこんなに和やかな会話をしたのはいつ振りだろうか?しかもいつ捕まるか分からないこんな状況なのに、安心出来ている。全て帝国騎士団の皆のお陰だ。



 周りではエドワードが会話に参加した驚きでざわついているが、本人はもう話す気は無いらしい。ジョシュアなどは必死に話し掛けているが、完全にスルーしていた。



 皆が賑やかになってきたが、これらは全て急ぎの馬上での会話である。レイティアでも離されない程度に加減はしてくれてはいるが、優雅な散歩という速度ではない。それでもこんなに会話が出来るのだから、常日頃はもっとすごい速さで馬を駆けさせるのだろう。



 レイティアの体力を考え、途中で幾度かの小休止を挟み軽い携行食のようなものを食べた。ゆっくり食事を取るより、まずは安全な帝国に渡ろうということのようだ。



 そうした考えで、先を急いだ結果無事夕方前に国境の街へと到着することが出来た。カインとは何度か会話したが、疑惑のメイルース伯爵領へ到達したということだ。



「ここからはメイルース伯爵領となる。まだはっきりとはしていないが、かなり疑惑の人物が治めている。決して油断することの無いよう頼むぞ!」 



 カインの声に各人が頷く。レイティアも何も出来ないながらも、気を張る。



「このまま関所まで進む。伯爵領では止まらずに行くから、皆遅れないようにしてくれ」



 王国内の領地同士には関所はないが、国境には関所が置かれている。通常であれば一般人でも、普通の身なりで目的がはっきりしていれば止められることはほぼ無い。ましてや他国の要人や役職に就いているものを止めることなどあり得ない。



 ただ、今は王国内も非常事態とも言える程に政治的に不安定だ。何が起こるかは誰にも分からない。カインは瞬時に対応できるよう、神経を尖らせる。



 そして先頭で走っていたカインだったが、馬の速度を落としてレイティアの横まで下がってきた。

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