どうしてそうなった
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
本日二話目の投稿となります。
まだ読んでいない方は前話から読んで頂ければ幸いです。
投稿ペースが乱れたままで申し訳ありません。
頑張ります!
カインはレイティアの発言を不審に思ったが、彼女はそのまま発言する。
「私も騎士になればいいんですよ!」
「はぁ?!」
「だって、それが一番目立たないですよね?せっかく変装するならそこまでやってもいいんじゃないかと思ったんです」
カインは初め何を言っているのか、意味が分からなかった。護衛対象者のこのご令嬢は制服遊びがしたいのか。どうしてそうなったのか、思考の過程も想像出来ない。発想が豊かすぎる。カインはレイティアに出会ってから初めてイライラしたかもしれない。
「公爵令嬢がそんなことしていいのか?!」
「今更気にしたって仕方ないですから。だって、捕まって犯罪者よりマシです」
「そうなんだが!」
捕まるよりはマシなのはそうだろう。だが、だからと言って遊び感覚で帝国の騎士服を着られるのは、カインと言えど容認出来ない。
「全て帝国騎士団に許されるならの話ですが。女性騎士もいらっしゃるんですよね?でしたら、そこまで浮くこともないと思うので」
「格好は真似できても、動きは無理だ。不自然さが出るぞ」
「気分を害したならすみません。でも騎士の方々を軽んじてるつもりはありません」
「…」
レイティアは軽んじていないというが、どう考えてもそうは思えない。騎士の動きなど、一朝一夕には身に付くものではないのだから。騎士服を着たからといって騎士になれはしない。
「私は騎士ではありませんが、護身術の一環として剣術もならっていました。もちろん、実際に敵と対峙したことはないですけど。多少は形になるかと」
「…剣は持てる。格好はいいとして、ここからどうやって国境まで行く気だ?結局馬車に乗れば、疑われるぞ」
なんとレイティアは剣を使えるという。実力は分からないが、公爵家は何を目指してレイティアを育てて来たのだろうか。カインは話を聞くたび思っているが厳しい妃教育の合間に、わざわざ剣術まで習わせるとは。
「もちろん、馬に乗ります」
「令嬢の乗馬か?」
「フッ、ここまで提案しておいて私が馬に乗れないと、そう思いますか?」
「…」
カインはここまで型破りなレイティアをずっと見てきた。それを思えば、どうして型にはまった貴族令嬢と同じだと決めつけたのか。そして提案を聞いているうちに少し不機嫌になったカインの、角のたった物言いが気に障ったのだろうか。レイティアもいつもよりすました顔で、棘のある言い方をしてくる。
「乗馬歴は10年以上です。横乗りしてると思われるのも嫌なので、対外的には明らかにしていない私の趣味です」
「…あんたはどこまで規格外で想定外の女なんだ…」
「あら、そうですか?失礼しました。これが本当の私なんです。はーっ…あの方と婚約して10年、ずっと隠していた事を明かせてスッキリしました!」
先程までのすました顔だったが、今度はカラッと晴れた青空のような満面の笑みを浮かべている。太陽の下が良く似合いそうだ、たどと本筋とは関係無いことをカインは想像した。
―この子は自分の本当の姿を隠し続けて、良き婚約者であろうと努力してきたんだな…。それを誰にも吐き出すことはなく。そして誰からも優秀と思われる婚約者になった。なったと言うのに…―
「あんたは、本当に自分を殺して10年耐えてたんだな…」
「そんな意識も無かったですが、もしかするとそれに近い部分はあったのかもしれませんね。それはそうと、私の提案はいかがでした?」
いかがも何も、レイティアに乗馬や剣術のスキルが本当にあるのであれば彼女の提案が一番手っ取り早いに決まっている。騎士数人で馬で駆け抜ければ、どんなに遅くとも二日もあれば国境を越えられるのだ。そのうち一人がレイティア嬢になったところで、特に問題も無いだろう。万が一にも敵に襲われるような事態になったとして、周りが全て騎士なのだ。よっぽどの事がない限り、問題は起こらないだろう。
「…あんたの提案の方が合理的だ。上司に相談してくる。でも悪いが、最終的な決定権は上司にあるからどうなるかは分からないぞ」
「ええ、それでもいいんです。皆さんが楽な方がいいと思って提案させて頂いただけで」
カインは急遽上司に報告に向かうこととなった。




