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提案

 


 ―――二人の夜の散歩翌日―――



 レイティアはいつもより早く目覚めた。最近はただのんびりと休んでいるだけなので、だらだらと昼近くに起きたりする。けれど、昨夜久しぶりに外へ出てカインと散歩したことで身体が活性化したのだろうか。スッキリとした気分で自然と朝早く起きてしまった。



「おはよう。今日は早いな」

「おはようございます。えぇ、昨日カイン様が散歩に連れ出してくれたおかげです」

「いい気分転換になったのなら良かったよ」



 昨日は思わぬところで動揺したが、二人で川を見た後に川沿いを散歩もした。カインは他の場所に行っても構わなかったが、レイティアが気に入ってくれた為川周辺での散歩になった。場所はどこでも、とにかく気分転換に成功したようでカインは嬉しかった。



 ―俺もたまたま見つけて気に入った場所だったが、他の人が見ても気に入ってくれるとはな。レイティア嬢は随分と色々考えてもいたようだったが、真剣に見つめる横顔に月明かりがかかって幻想的だった…―



「ありがとうございます。すごく楽しかったです!お返しに、何かお仕事などあればいつでもお手伝いしますので!」

「それは別にいいって。何でそんなに仕事したがるんだよ!」

「そうですね…。書類仕事が趣味なのかも。長年やってきたので、収支報告書とかを見るとワクワクしますね。どこが粉飾されてるかと思って」



 レイティアの青春を思って、カインはガックリとした。通常の令嬢と置かれた立場が違うとは言え、あまりにも残念すぎる。他の令嬢達がお茶会で美味しいお菓子を食べ愛だの恋だの盛り上がっている間に、もう一方は机にかじりつき書類を見つめて粉飾だ贈賄だ、などとやっているとは。あまりにも乾いた青春を過ごしている。



「…そうか。非常に助かる趣味なんだな。でも、今は誰も助けない趣味を満喫したっていいんだからな」

「そうですね、何があるかな…」

「色々あると思うんだが!」



 カインですらパッと思い付く女性が好きな趣味、宝石やドレスを買ったり美味しいお菓子や紅茶を探したり。そういった事は、レイティア嬢の趣味ではないようだった。まぁ今すぐ出来るかといえば無理なのだが。



「読書か…刺繍でもいいですけど、それより掃除でもしましょうか?」

「掃除も趣味に入るのか?」

「身体を動かすのが好きなので。それこそいい気分転換になるんですよ。あ、でも公爵家以外でやっちゃ駄目なんでした!」

「掃除も出来るとはなぁ。型にはまらない令嬢だとは思っていたけども。これからの提案がしやすくなるよ」



 今朝方トマスの所に行って、カインの報告と同時に提案を聞かされた。カインも聞いて、それでいいような気がした。



「提案ですか?」

「いつまでもここに居る訳にはいかないだろ?二日後には例の式典があるんだが、それが終わって俺たちが帝国に帰るまでだとまだ結構あるんだ」

「そうなんですね」

「だから、それまでひたすら隠れてるのも厳しいしリスクだって出てくるだろ?」

「一ヶ所に留まり続けるリスク、ということですか」

「そうだな。それで提案なんだが。上司がレイティア嬢を匿い続けるより、変装して動いて見たらどうかと言っているんだ」



 ―変装?何それ!楽しそう!この逃亡生活が始まってから、今まで経験したことの無いことばかりで…。本当に楽しい。皆に迷惑を掛けてるし、捕まったら終わっちゃうけど。今しか出来ないことは何でもやってみたいわ―



 まだ詳細も聞いていないのに、レイティアは既に乗り気で。結局、提案者達の心配は全く意味の無いものとなった。





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