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方向性

続けての投稿になります。

こんな時間にすみません。

まだ読んでない方は、前話から読んで頂ければ嬉しいです。


いつも読んでいただきありがとうございます!

一部改訂しました。

 


 トマスとしては護衛対象者には動かないでもらった方が楽なのだが、彼女の状況や年頃などを考えると長い時間同じ場所に留めるのは酷だなとも思っていた。



「なるほど。それで使用人なら多少は動けるし、かといって人目につくほど表にも出ない。うーん…ありかもしれないですね」

「だろ?検討の余地ありだと思うんだけど」

「カインからレイティア嬢に打診してみて貰いましょう。本人の意志が無くては実行出来ませんから」

「そうだね。いかにも貴族令嬢といった女性には、使用人の真似事なんて受け入れられないかもね」



 普通の貴族女性は、常に侍女や使用人に囲まれて育っている。それらの人々を使って日々の生活を送るのが当たり前なのだ。「使う側」と「使われる側」という立ち位置が明確なだけに、使用人を見下す態度の貴族も少なくない。



 トマス達はレイティアには直接会ってはいないので、彼女がどんな女性なのかまだ掴めていない。ただ王太子妃にまで登り詰める公爵令嬢と聞かされると、彼らが胸焼けするほど出会ってきた典型的高位貴族令嬢がイメージされてしまうのだ。



 実際にはドレスを引き裂いて走り、カインに突進してくるような型破りな令嬢なのに。



「まぁ、その場合は諦めておとなしく身を隠してもらうしかないですね」

「…カインといえばさ。あの子、今回レイティア嬢の件で随分と自主性というか、自分の意志が出た気がしない?」



 突如として話が変わり、カインの話題になる。つまりは先ほどの話は内定くらいになったのかもしれない。



「それは団長でも皇子でもなく、お兄さんとしての目線が強くないですか?」

「私はカインのお兄ちゃんだからね!」



 以前カインが報告にきた時と同じだ。他に人がいなければ、急にブラコンお兄ちゃんのスイッチが入るのだ。そしてトマスはクレイにかなり信頼されていると言える。二人が兄弟という事実を知るものは、ほぼいないのだ。



「それはそうですけども。でも、そうですね。カインは今まで仕事はしっかりこなしてました。むしろ完璧に近い。けれど、自分の意見を出すことは少なかった。実力は間違いないのにどこか諦観があるような」

「カインは小さい頃からやれば出来る子だったんだ。でも、遠慮がちというか高望みをしないというか」



 お兄ちゃんスイッチが入ったクレイは、取り敢えず隙あらば兄弟を誉める。兄弟愛を感じる一幕だ。



「今も根本的なところは変わってないのかもしれないですね。だけど今回不測の事態に巻き込まれて、自分から関わりたいと言ってきたのはかなりの進歩だと思いました」

「レイティア嬢の境遇には同情するが、あの時にぶつかったのカインで本当に良かったよね。お互いに取ってプラスになる出会いになったのだから」

「本当にそうですね。最初に襲われていた時、カインじゃなければ斬り抜けられなかったかも知れませんしね」



 うんうんと頷きながらも、実はそのカインよりも剣術の実力が上であろうと思われるのがここにいる2人なのだが。そこはあえて触れずにいるようだ。



 思いもしなかったカインとレイティアの出会いだが、お互いに取って良い影響を与えている。この先二人がどう変わっていくのか、変わった結果何が起こるのか。上司二人は思いを馳せるのだった。




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