発想力
本日二話目の投稿となります!
こちらから読んでしまった方は、前話からお読みいただければと思います。
皆様に楽しんで読んでいただければ嬉しいです!
明日も投稿出来るよう頑張ります。
はぁ、とまた大きな溜め息をつく。なぜそんな発想になるのか、カインには検討もつかない。男と同じ部屋で着替えるなんて、色々問題だと思わないのだろうか。
「あのさ、それはちょっと問題じゃないか?」
「どうしてです?だってカイン様が何度も出入りする方が大変じゃないですか。人に見られないようにしなければならないし」
「あのなぁ、ただでさえ男と二人きりの空間なのに。その上そこで着替えるなんて、何かあったらどうするつもりなんだ!」
きょとんとした顔でレイティアがカインを見る。
「だって何かあった時の為にカイン様が護衛でいてくれるんですよね?じゃあ何もないですよ、カイン様は強いですから」
「…そうだが!そうなんだが!違うというか、っておい!」
カインが苦情を申し立てている間に、レイティアはごそごそと着替えを持って衝立ての陰に行ってしまった。
「カイン様はお気になさらず食事を始めて下さい。それ程お待たせしませんので!」
「食事を始めろって…全くどうなってんだよ…」
衝立ての向こうに行かれてどうすることも出来なくなったカインは、レイティアに言われた通り食事の用意を始めようと試みる。
カインが木の皿を置く。
パサッ。
そこにサンドウィッチを載せる。
シュルシュル。
―あーもう、勘弁してくれよ!音がっ!…気になって準備に集中出来ねぇ!まじでどうなってんだよ…―
カインは思わずテーブルに突っ伏す。カインからすれば少女といった年齢のハズのレイティアだが、何故かずっと翻弄されっぱなしだ。こんな話を同僚にしようものなら何を言われることか。勿論、話せる内容ではないのだが。
どうにかこうにか食事の準備を終えて、いざ食べようかという時にレイティアが衝立ての向こうから出て来た。どうやら着替えが終わったようだった。
「お待たせしましてすみません。カイン様、やっぱり待っていてくれたんですね」
「あ、あぁ」
本当は待っていたのとも違うが、そこは訂正せずにおいた。レイティアを見てみると、一人で着替えたのにきちんと平民の服を着こなしていた。上手いもんだと感心しつつ、服を変えても凛とした立ち居振る舞いや、その美しさは隠せるものではないんだなと思った。
「準備していただいてすいません。では、私もいただきますね」
食事の内容としては大したものでは無かったが、レイティアの言うように何故か美味しく感じたのが不思議だった。
食事が終わった頃には外はすっかり暗くなり、夜が訪れていた。後でまたレイティアの部屋に様子を見に行くが、カインは今は別名義の部屋で持ち込んだ書類仕事などを進めていた…つもりでいた。
大して難しい仕事でもないのに、何故か遅々として進まない。
「…どうしてこうなった…!」
今日、何度目の心の叫びだろうか。
―昨日から俺の想定外の事ばかり、というかそれしか起こってない気がする…。レイティアを助けた、それはいい。だが、助けた後から俺だけが焦ったり動揺したり、常にないことばかりで翻弄されまくってないか?!―
カインの本当の身分は皇子なので、高位貴族の令嬢にはしょっちゅう出会っている。だがレイティアのように、自身の世話を必要としない令嬢など見たことがない。当たり前だが、皆が息するように自然に人を使って細々とした世話をしてもらう。それが普通なのだ。勿論カインの家族だってそうだ。
かといって下町の娘たちともまた違う。カインは皇子でありながらも、諜報活動も行うので下町にも頻繁に出入りをする。そこで出会う娘たちに、レイティアのような聡明さや所作の美しさはやはり見受けられない。
つまりはレイティアだけが特別ということだ。変わっているとも言える。
―護衛とはいえ男と二人きりなのに、一緒にごはん食べようだの着替え待っててだの…。ありえないだろ!…全幅の信頼を寄せてくれたという意味かもしれないが、それにしたって!熟練の小悪魔ぐらいひどくないか?―
結局書類仕事はさっぱり終わらないまま、夜はふけていくのだった…。




