隠れる
昨日は投稿出来ずすみませんでした!
また頑張って投稿しますので、これからも皆様に読んでいただけたら幸いです!
よろしくお願いします。
カインの顔と少し距離が出来て、レイティアはこれで落ち着いて話が出来ると思った。だが、落ち着いて気付いてしまったのだ。自分の服装に。
昨夜、逃走してボロボロになったままのドレス。あまつさえ、レイティア自身の手で引き裂いているのだ。大胆を通り越すぐらいすごいスリットになってしまっていて、セクシーどころの話ではない。
―私、何て格好なの!?人に見せていい姿じゃなかったわ!―
隣で急にあわあわし始めたレイティアを不審に思って、カインはじっと見つめてみる。やはり何かあったのではと心配になるのだ。しかしカインが見つめるとより一層慌てているような気もする。
「どうかしたのか?やはり何かあったのか?」
「ち、違います。ただ、あの…ちょっと…」
「ちょっと?」
「ちょっと後ろ向いてもらってもいいですか?!ド、ドレスがボロボロなんで!」
「……っっ!気が利かなくてすまない!!」
瞬間にくるりとレイティアに背を向ける。
「私こそ色々すいません!少し待っててもらえますか!?」
レイティアはやっと力が入るようになった自分の足でしっかり立ち、急いでベッドに近寄った。そしてシーツを引っ張って、自分に巻き付けた。
―応急処置にも程があるけど、これしかないんだもの!さっきのドレスよりはマシよね―
「今度こそ大丈夫です!カイン様!」
「そうか、じゃあそっちを向くぞ?」
「はい!問題ありません!」
背を向けていたカインが、またくるりと回りレイティアの方を見る。ボロボロに裂けたドレスを隠すため、上からシーツを巻き付けただけなのだが…。
―おいおい、なに考えてるんだよ!全然大丈夫じゃねーぞ!ドレスは隠れてる、隠れているが!かえって変な想像が…。まるで夜を共にした二人みたいだろ!―
今度はカインの方が赤面し、片手で顔を押さえ溜め息をつく。
「はぁ…」
「どうかしました?」
こてんと首をかしげ、カインを見る顔つきは絶対何も分かっていない。
―このご令嬢は清く正しく生きてきて純粋なんだ!余計なことを思ってしまった俺が悪いんだ!…あれは服だ、服なんだ!―
何とか自己暗示を掛け、平常心を取り戻したカインは遂に話を本題に戻すことに成功した。
「ゴホンッ、えっと。戻るのが遅くなってすまなかった。もう夕方になってしまったな」
「あ、本当ですね!ずっと寝ていたので、全然気付いてせんでした」
「まぁ、身体を休めるのは大事だからな。休めるときは思いっきり休めばいいんだ、そこの椅子に掛けてこれからの事を少し話そうか」
「色々とありがとうございます」
昨夜からほぼ寝っぱなしのレイティアに優しい言葉をかけてくれるカインの気遣いがありがたい。
成り行きで巻き込んでしまっただけなのに、助けてくれた。それだけでなく部屋に匿ってくれた上に、図々しくずっと寝ていたレイティアを心配までしてくれた。帝国騎士というのは、皆こんなに優しいのだろうか。女性は守るという教育が徹底しているのかもしれない。
「あんた…いや、すまない。レイティア嬢の休んでいる間に仕事関係の仲間、というか上司に会ってきたんだが」
「はい。呼び名はカイン様の呼びやすいので構いませんからね」
「あぁ、分かった。それで上司の今回の顛末とレイティア嬢の状況を相談してきたんだ」
「カイン様個人だけでなく、職場にもご迷惑をお掛けして申し訳ありません」
レイティアが頭を下げる。
「気にしないでくれ。俺が関わるって自分で決めたんだからな」
今回の件で、レイティア嬢が安全になるよう最後まで関わるとカインは強く決意していた。きっかけはなんであれ、もはや他人に丸投げするなんて事は考えられなかった。




