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いつも読んでくださる方、たまに読んでくださる方、そして初めて読んでくださる方、皆様に読んでいただけて嬉しいです。

ありがとうございます!

これからも更新頑張ります!


一部加筆修正しました。


 


 馬と呼吸が合ってきたので、少し早めに歩いてもらう。やはり乗馬は楽しくて、嫌な気分を吹き飛ばしてくれる。



「宰相様の嫌味は今に始まったことじゃないわ。魔力測定くらい受けましょう!だけど、そんなに私を婚約者から下ろしたいなら、初めから自分の娘をしっかり教育すればよかったのに」



 レイティアが王太子の婚約者になったのは、本人同士の意思などまるで関係無い。国内の高位貴族の子女でちょうど良い年齢、さらに王家と関わっても問題ない教養やマナーが身に付いているかなどが考慮された。



 レイティアは婚約者候補として父親から打診された時、公爵家の娘として役に立ちたいと思って受け入れたのだ。他の候補では父親的に話にならないレベルだったらしい。



 父親が国の将来を見据えた上でレイティアなら、と言ってくれたのだ。王太子であるミハイルに特別な感情があった訳ではないが、レイティアは甘んじて受け入れた。そして結果として、王家も議会もそれを承認した。



 他の候補者がしっかりしていれば、レイティアだって婚約者にならなくて済んだのだ。ミハイルに恋い焦がれてもいなければ、将来王妃になって国を掌握したいなどと思ってもいない。



 こちらからすれば仕方なく受け入れただけなのに、後からになってお前には務まらないなどと難癖をつけてくるなんて卑怯だと思う。レイティアに魔力が無かった事で、婚約者交替の格好のネタになってしまったのだ。



 王家はレイティアの魔力が無いことを問題にしなかったが、宰相は議会を動かそうと何かと仕掛けてくる。それが今回の魔力測定ということだ。



「いざとなれば婚約者なんて辞めてもいいけど、妃教育は楽しいのよねぇ」



 流石に他人には聞かれたらまずいような発言だが、今は1人だ。構いはしない。



「まぁ、なるようになるよね!今更魔力が出るわけないし、自分に出来ることをやるだけだわ!」



 そうして妃教育に更に全力を注ぐ事を心に決めて、手綱を操り馬で駆けていくのであった。




 ――――――




 またまた場面が変わり、レイティアはぐっと女性らしさの見える姿になって美しさも増している。



 王宮の通路を歩いていて、プラチナブロンドの髪が静かに揺れる。貴族令嬢の模範ともいえるような綺麗な歩き姿だ。



 レイティアには聞こえていなかったが、すれ違う若い男性達からはあまりの美しさに感嘆の声が出ていた。



「はぁー…。レイティア・ゴードリック嬢じゃないか、美しいなぁ。一度夜会のパートナーになってみたいよ。皆の羨望の的になれるぞ」

「王太子殿下の婚約者じゃなければなぁ」



 婚約者じゃなければ自分が選ばれるような口ぶりなのはさておき、男性達は好き放題に噂する。



「でも、もしかするとひょっとするかもよ」

「あー。残念な完璧令嬢だからな。婚約者じゃなくなれば俺達にもありえるか?」



 レイティアは見目麗しく、所作も美しい。更には妃教育でも歴代最高の成績と言われている。どれを取っても完璧ということで完璧令嬢、なのだがそこへ魔力無しの事実が世間へ伝わった。その結果、唯一にして最大の欠点ということになり「残念な完璧令嬢」という失礼な通り名が出来てしまったのだ。



 本人にもなんとなく漏れ伝わっていたが、言いたい人には言わせておくことにしていた。誰に何を言われようが、レイティアのしてきた努力や知識が消えることはないからだ。



「そうだよ。それに近頃、王太子殿下は別な令嬢を側に置いてるって噂だってさ」

「そうなのか?俺は聞いたこと無かったけど」

「一部では既に広まってるぞ。実際に見た奴もいるらしいし」



 優雅に歩くレイティアに男性達の噂は聞こえていなかった。ただ、前から1人の令嬢が歩いてきたのが見えるだけだ。



 令嬢は勢いよく歩いていて、なぜかレイティアに真っ直ぐ向かってくる。通路は大人が5~6人並んで歩いても余裕がある広さなのにだ。



 気のせいかと思いレイティアは歩みを進めていたが、彼女はレイティアを狙っているかのようにそのまま向かってきた。まさか黙ってぶつかる訳には行かないので、直前に半身をずらしかわしたが一体何のつもりだろうか。



 戸惑いながらすれ違った令嬢を見てみると、ニコニコと笑顔を浮かべている。子供のいたずらのようなつもりなのか。すると彼女から声を掛けてきた。



「ごきげんよう。レイティア様は私にはご挨拶もしてくれませんのね。悲しいですわ」

「……は?」



 ―この人は何を言っているのだろうか?先程の事といい、全く理解不能だ。しかも、謝罪するでもない―



「私のような身分のものには声も掛けて下さいませんのね。ただご挨拶したかっただけなのに」

「はぁ?何を仰っているのですか?」

「いえ、いいんです。私が悪いんです。気にしませんから」



 レイティアが呆気に取られているうちに、彼女は自己完結して去っていってしまった。最初から最後まで、何だったのか意味がわからない。



 ―よく考えてみれば、現在通っている王立学園の一学年下の令嬢だったかも。確か…リリス嬢だったかしら―



 レイティアは彼女と特に関わった記憶も無かった。だがわざとぶつかってきたということは、何か恨みをかっているのだろうか。考えてみても、思い出すことは何も無い。



 気にしても仕方ないので、レイティアの中では終わったこととしてまた歩きだした。もう会うことも無いだろう。その時にはそう思っていた。



 まさかそれから数ヵ月後に、レイティアの断罪未遂の場で対面することになるとは夢にも思わなかったのだ。




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