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プロローグ

初投稿です。

皆様に楽しんで頂けるよう頑張ります。


一部加筆修正しました。

 


 ―――「レイティア・ゴードリック!!君との婚約は今夜を持って解消とする!」―――


 きらびやかな王宮の広間に突如として響き渡る声。それは間違いなくレイティアの婚約者であるはずのミハイル・シュベルタイン王太子殿下のものだった。


 婚約者として長い間、見つめ続けてきたミハイルの顔。その顔は今まで自分が見てきたものとはまるで別人のようにみえる。あまりの出来事に理解が及ばない。



 来週にはミハイルの18歳を祝う舞踏会が大々的に開かれ、その場には未来の王太子妃として婚約者のレイティアがもちろん伴われる。そして今日はそれより規模を小さくした前祝い的な夜会――のはずだったのだが…



 彼の横には儚げな令嬢が、うつむき加減で大層悲しそうな顔をして佇んでいる。ミハイルは隣の令嬢の肩を優しく抱き寄せたあと、憎々しげにレイティアを睨み付けると広間へ集まっている皆に響き渡る大声で冒頭の宣言をしたのだった。



 ―――……ちょっと何言ってるかわからないんですがっ!―――

 全くの事実無根だし、仮にも一国の王太子ともあろう人が証拠も罪名もはっきりしないまま断罪とか大丈夫なのだろうか。



 今日の夜会はある意味内輪とも言える規模だったが、それでも国内の有力貴族は大方出揃っている。それなのに、だ。迂闊とも言えるこの宣言。



 レイティアは一体何と言葉を発すればいいのか決めかねていたが、それをいいことにミハイルはまだこの場を続けるつもりだ。



「彼女はここにいるリリスを意図的に虐げた。あまりに罪深く許せるものではない!」



 ――リリス…様?顔と名前は認識していたけど、言うほど絡んだこと無いんですけど?どういうことですか?――



「リリス様には何度かお会いしたことがございます。確かにございますが…あまりお話ししたことは無いと思います」


「ひっ、ひどいですぅ。やっぱり私の事無視して…ぐすっ」


「レイティア黙れっ!やはりお前がリリスを!」



 自分にとっての事実を告げたつもりだったが、全く逆効果だったようだ。



 けれど彼は本気のようで、周りの皆も困惑はしているが王太子殿下の発言に異を唱える者が出てくる訳でもなかった。



 この場に居たって誰も私を助けてくれない。このままでは更に状況は悪化するとしか思えない。



 それならば私に出来ることは一つしかない。



「今夜を持っての婚約解消、確かに承りました」



 皆が、ミハイルが驚いた顔で私を見つめる。まさかすんなり受け入れるとは思わなかったようだ。その隙に――



「それでは失礼いたします!」



 逃走あるのみっ!!



 出来るだけ優雅に、けれどとても早足で広間を退出する。後ろがざわつきはじめているが気にせず足を進める。広間さえ出てしまえばこちらのものだ。



「えっ?ちょっ、待って…!」



 後ろで彼が何かを言っている気がするが、広間に戻る気は無い。こちらの言い分を聞く耳も持たず、一方的に悪役に決めつけておいて最後まで黙って聞くと思ってるのだろうか。



 そうして王宮の廊下に出るやいなや、高いヒールを脱いで本気で全力疾走する。きっと捕まったら良くない事が待ち受けている事だろう。



 ――公爵令嬢の本気の走り、とくとご覧あそばせっ!――



 幸いにして身体を動かすのは得意な方なのだ。お年頃の令嬢としては残念だか、今は全力で走る!今日のドレスがシンプルなマーメイドラインのもので良かった。レースやフリルがたっぷりのドレスでは走るのに大いに支障が出たことだろう。



 はしたないけれど、ヒールを握りしめながら王宮の廊下を走る。王宮なんていうのは掃除も行き届いているし、大体が大理石とかだから靴とか無くたって足を痛めず走れる。



 今はまだなんの気配を感じないけど、誰かが冷静になったら追っ手を差し向けられて捕らえられたりするんだろう。そして幽閉されたり流罪になったり処刑されたするのだろうか。


 だからなんの罪で?そんな疑問はいつまでたっても消えないけれど一度王太子殿下が口にしたならば、周囲はそれを叶えるべく行動に移すだろう。



 だけど私だって生きていたい。濡れ衣着せられて、笑顔で「了解です」とはならない。今捕らえられてしまったら、確実に何らかの罰を受けることになりそうだ。



 ―結論、負け戦には挑まない。逃げるが勝ちというか、戦略的撤退です。一旦体制を立て直してから、また戦えるかやってみましょう―



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