天晴れ村
初投稿です
昔むかし、天晴れ男がおりました。
天晴れ男は世界一の晴れ男で、天晴れ男がやってきた村にはいつまで経っても雨が降らず、かんかん照りの日が続くのです。
ある夏の日、天晴れ男が野菜村にやってきました。
野菜村の野菜村人たちは、自分たちでつくった野菜や米だけ食べて生活していました。野菜や米は、水がなくては育ちません。毎年夏に雨がたくさん降らないと、野菜村人たちは食べものを作ることができないのです。
天晴れ男がやってきてから、野菜村には雨がちっとも降りません。ほんの何週間かのうちに、畑も田んぼもみんな干からびてカラカラになってしまいました。
困り果てた野菜村の野菜村人たちは、野菜村長の家に集まって相談することにしました。
「いったいあの天晴れ男をどうしたものだろう?」野菜村長は言いました。「天晴れ男が野菜村にいる限り、わしたちは野菜も米もつくることができん。」
「もうこの村には食べるものがほとんどない!」一人の野菜村人が言いました。
「いったいあの天晴れ男は、どうしてこんな野菜の育たぬ野菜村なんぞに長居しとるんじゃろう?」野菜老人は言いました。
「天晴れ男はいったい、何を食べて暮らしてるんだろう?」
天晴れ男は、何を食べて暮らしてるんでしょう?
「あの天晴れ男をなんとかしなくては!」別の野菜村人が言いました。「このままでは、うちの子どもたちが飢え死にしちまう!」
「それどころか」野菜村長の野菜奥さんが言いました。「うちには飢え死にする子どももいないんですよ!」
野菜村長と野菜奥さんの子どもは、ちょうど一週間前の金曜日に遊びに出かけたきり、帰ってこないのです。
「うちの子どもたちも」別の家の野菜奥さんが言いました。「この前の月曜日に学校へ行ったきりなんですよ。」
「うちの子どもも同じだ!」野菜村人たちは口々に言いました。「いったい子どもたちはどこへ行っちまったんだろう?」
野菜村の子どもたちはどこへ行ってしまったんでしょう?
天晴れ男は、野菜を全然食べません。そのかわりに、人間の子どもを食べるのです。
天晴れ男は、野菜村にきてからというもの、毎週月曜日と金曜日の晩に一人ずつ、野菜村の子どもたちをつかまえては食べていました。
このことを知った野菜村人たちは怒って、天晴れ男の家へ押しかけていきました。そして、天晴れ男を竹やりで突いて殺してしまいました。
「みんなで、この悪い天晴れ男を食べてしまいましょう。」野菜村長の野菜奥さんは言いました。「天晴れ男がわたしたちの子どもを食べたように。」
野菜村人たちは賛成しました。そして、天晴れ男に食べられた子どもたちの葬式で、天晴れ男の体を全部きれいに食べてしまったのです。
野菜村の野菜村人たちは、これで野菜村にもまた雨が降るだろうと思いました。
ところが、天晴れ男がいなくなってから何週間経っても雨は降らず、かんかん照りの日が続くのです。
野菜村の畑も田んぼも、ずっと干からびてカラカラのままです。
「これはきっと、天晴れ男の呪いに違いない。」野菜村長は言いました。「わしたちが天晴れ男を食べてしまったから、わしたち自身が天晴れ男や天晴れ女になってしまったのじゃ。」
かんかん照りはいつまでも続きました。
野菜村人たちはいつまでたっても野菜をつくることができず、野菜村は永遠に野菜の育たぬ野菜村になってしまいました。
そのうちに野菜村人たちは、村の名前を天晴れ村に変えました。野菜村人たちは天晴れ村人になり、野菜村長は天晴れ村長になりました。
こうして、野菜村は天晴れ村に生まれ変わり、天晴れ村人たちは今でもそこで暮らしています。
え? 天晴れ村人たちは何を食べているのかって?
毎週月曜日と金曜日の晩に、よその村で子どもたちをつかまえて食べているんですよ。
おしまい
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