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初冬
冬が近い、少年の家はほとんど板張り、天井板はなく梁が剥き出し、板の間は名の通り、板だけで隙間から地が見える。暖房は炭だけ。従い、寒いのだが、以外に気にならなかった。いつ、薄手のセーター、着たきりすずめである。霜焼け、皸で手の甲には血が滲む。風邪をひけば、喉に焼きネギを巻き、外で遊んでいた。学校に行けば、女の先生が薬を塗り、爪を切ってくれた。
父も母も家にはいない。ほんのたまに帰って来る。母は、少年に本を持って来た。父は、酒に酔って帰ってきた。坂を上ってくる父を見つけると兄は山に逃げた。一夜をそこで過ごす。
少年は夜半まで、父の前に座り、殴られていた。祖母は下の家に助けを呼ぶと、おばさんが駆けつけ、少年を抱え逃げる。
翌日、父はいなかった。兄が戻っていた。
ある日、少年は父に引き取られた。祖母が小銭を少年に渡し、乗るべき汽車を言った。少年が分校に戻らないと知ったのは大分後である。