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お盆の夜
昭和40年も中頃、人が歩くだけ坂を上ると瓦葺きの家、程ほど大きな家だが崩れた土壁が所々、見えている。祖母さんと孫の二人が住んでいる。雨が降れば、雨漏りもある。祖母さんの娘が孫たちの母親で、父親は婿入りだ。夫婦仲は良くない。父親は仕事場の近くに下宿し、母親は都会に憧れ、都会に住む親戚を渡り歩いて帰って来ない。
と云うわけで、孫たちの世話は祖母がしている。そして、描かれているのは、この子たちの夏休みである。
お盆は坂の下で送り火を焚く。藁束に火を点ける。
その家では、まだ提灯の明かりで夜道を歩く。要は貧乏なのである。
しかし、子供は気にならない。先に立つ、下の子が提灯を持っている。送り火が終わると、親戚の家に向かう。貰い湯に行くのだ。
道沿いの田には、ホタルが舞っている。田とは言え余程、水がきれいなのだろう。
風呂上がり、暫し祖母は、話に興じる。
帰りはホタルを捕まえてる。蚊帳の中に放すのだ。