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【短編版】死屍累々のアトランティス〜目が覚めたら世界が死屍累々だったので、仲間達と異能の力を駆使して何とか生き残ろうと思います〜

作者: 近藤ハジメ

 その日、目が覚めると全てが変わっていた。

 

 窓の外には絶望が広がっていた。

 各所から燃え上がる黒煙。

 明らかに死んでいる傷を負いながらも進む死者達。


「何あれ、ゾンビ……?」


 誰かが呟いた。


 そしてそれは、恐らく当たっているだろう。

 中には全身が焼かれ一部炭化しても動いていたり、腹から腸が零れ落ちる個体もいる。


 死屍累々。

 まさしく、その言葉通りの絶望的な光景だった。


 カタン、と誰かが椅子を倒した。


 マズイ! 


 もしも彼らがゾンビ映画に出てくるような生態を持っているのならーーーー。


 そう思った瞬間にはもう遅かった。

 瞬間、ゾンビ達は一斉にこちらを向いた。


 何人かから悲鳴が上がる。


 階段を登る、無数の足音がした。


 俺はすぐに廊下に出て確かめる。

 この教室のすぐ前が階段だったが、扉を開けた瞬間に目に入った。


 階段を登る、この学校の制服を着た無数の骸達。


 下の階にいた下級生達だ。先生もいる。

 でももう、これは人じゃ無い。

 どうやら、この階にいる生徒は無事らしい。

 他のクラスも扉を開けて出て来た。


「っ、机を持って来い!」


 俺はすぐに命令を出した。

 このままじゃダメだ。

 少なくとも、この階にゾンビが登って来る事は防がないと行けない。


「男を集めろ! 階段にバリケードを作る!」


 そう指示を出しながら、この階に一足先に辿り着いたゾンビを飛び蹴りで吹っ飛ばした。

 そのまま後ろにいたゾンビを巻き込んで落ちていく。

 これで少しは時間が稼げるはずだ。


「早くしろ! お前らも同じになりたいのか!」


 ただ呆然としていた奴らに喝を入れた。

 その言葉でハッとしてようやく動き出す。

 女子も協力して机を廊下に運び出し、椅子も使いながら絡み合わせてバリケードを作った。






 それから少し休憩して、会議をする為にみんなで集まった。

 三クラス、六十二人が一つの教室に集まるとかなり窮屈だが仕方ない。我慢してもらおう。

 なるべく音を漏らさない為に机や椅子は使わずに床に直座り、そして窓と扉も閉め切る。


 流れで俺が司会をする事になった。こんな事なら「一度しっかりと話し合いをするべきだ」と提案するんじゃ無かったなぁ。


「とりあえず、全員怪我は無いか?」

「はあ? 何でそんな事聞くんだよ」


 B組の山王武がイライラした表情で言った。

 まあ隠キャの部類に入る俺が司会をやっていることに変なプライドがそれを許せないのだろう。


「アイツらの生態が映画と同じなら、ゾンビに付けられた傷から感染してその人間もゾンビになる可能性があるからだ」

「お、俺は大丈夫だぞ」「私も」「僕も」


 とりあえず怪我は無さそうだ。良かった。


「それじゃあ次にどこから身体に異常は無いか? 頭が痛いでも、少し熱があるとか、何でも良い」


 この質問をして理由は単純で、俺達だけがゾンビになっていないのが不思議だからだ。


 十中八九、彼等はゾンビに襲われてゾンビになった。しかし中には無傷のままゾンビになった個体もいたのだ。

 簡単に言えばゾンビに襲われた人間と襲われていないのにゾンビに変わった人間がいると言う事だ。


 その原因はわからないが、もしかすると俺たちは変わっている途中だと言う可能性もある。


 そのために変化の兆候かもしれない、些細な出来事でも知っておきたい。

 その全てを黒板に書き上げる。


 ただ、そのほとんどが吐き気や頭痛であり、外の光景を見れば誰でも思うような症状ばかりだった。


 もしかするとそれがゾンビに変化する条件かもしれないし、油断はしないがな。


「あ、あの」

「どうしたんだ、村神? 何かあるなら言ってみてくれ」


 控え目に手を挙げたのは、村神むらかみあい。クラスでもあまり目立たないタイプの文学少女だ。


「あのね、私、みんなの頭の上に文字が見えるの」


 彼女はそう言った。

 他のみんなが騒つくが、無視して聞く。


「それはどんな文字なんだ?」

「人それぞれで違うんだけど、文章がほとんどかな」


 文章?

 ただやっと他の人とは違う情報が得られた


「例えば俺の頭の上には何が見える?」

「えっと、《引き寄せて、引き離す。○○○……》ご、ごめんね、その先は読めなかったんだ」


 引き寄せて、離す?

 一体何を言って……っ。

 もしかして? いや、でも、あり得ない。


 あり得ないと思いながらも、身体の内から湧く異様な確信がそれを実行に移させた。


「ふう」


 試してみよう。


 俺は手のひらを虚空に向ける。

 その先には後ろの棚に乱雑に置かれた教科書。

 力を使う必要はない。意識するんだ。

 「引き寄せる」と。


 すると一冊の教科書が急に何かに引き寄せられたかのように浮き上がり、最後には俺の手に収まった。


「「「っ!!?」」」


 それぞれから息を呑む音が聞こえた。

 それは無理もない。俺も驚いている。


 これは間違い無く、異能の力だ。


「……今日の全員会議は中止だ。この後すぐにA組代表として櫻井凛、B組代表として大岩寺だいかんじ大和やまと、そして村神さんは家庭科室に集まってくれ」

「わ、分かったよ」

「了解した」

「うむ」


 半強制的に全員で行っていた会議を終わらせて、机と椅子がある家庭科室にて新たに会議を開く。


 メンバーはA組から櫻井凛、 B組から大岩寺大和、一応C組代表として俺が、そして参考人として村神に参加してもらった。


 しかし、会議が始まる前に二人から質問が出た。

 隠す理由もないので正直に二人を呼んだ理由を話した。


「それでどうして私たちを呼んだの?」

「うむ」

「それは単純に各クラスのそれぞれをよく知る奴がいた方が良いと思ってな。A B組のまとめ役の二人なら適任だろ?」

「それはまあ」

「確かにのう」

「これから決める事柄には、それぞれのクラスをよく知る二人の意見が必要なんだ。力を貸してくれ」


 そう言って頼むと二人とも頷いてくれた。

 そうと決まれば話は早い。


 俺は自前のノートとペンを取り出して、村神から話を聞いていく。

 まずはここにいるメンバーの頭に浮かんでいる文章からだ。


 安全確認のためにこの三人だけで実験を進める。


 特に危険性もなく、村神が頭の上の文章に書かれたことと、実際に起こったことを比べて確信した。


 村神には相手の異能の力を見ることができる能力があると。

 その話をもとに俺たち3人の能力も確かなものとなった。


「まあ適当に名前を付けるとして、櫻井は【桜】、大岩寺は【岩肌】ってところか」

「何だか名前通りじゃない?」

「うむ。納得いかんな。名前通りにしかならんのか?」

「それはたまたまだろ。俺の名前なんて五十嵐健一郎だぞ?」

「いつ聞いてもこ風な名前じゃのう」

「お前にだけは言われたかねえよ」

「おお、確かにな!」

「ふふっ」


 そうして会議をするうちに、冗談を言い合えるくらいには二人とも仲良くなれた。

 


「それでだが、多分この後の救出は見込めないと俺は思ってる」


 その言葉を聞くと二人の目の色が変わった。

 村神はウトウトして半分寝ているが、長いこと見続けてもらったから仕方が無いだろう。


「ふむ。なぜそう思う?」

「逆に聞くが、お前らは助けはあると思えるか?」

「……無理、ね。そもそも各地で火事が起こっているのに消火はされず、そしてゾンビ達は我が物顔で歩いている」

「誰がどう見ても、警察やら自衛隊やらが機能していないのは明白じゃの」


 二人が言ったその通りだ。

 おそらく警察や自衛隊、さらには救急車なども機能していないと思う。

 それに仮に救助されたとしても、その先が安心できるかどうかと聞かれたら、無理だ。

 だから俺たちは自分達だけで生活していく術を見つけないといけない。

 

「当面は健一郎にリーダーをしてもらおう」

「俺で良いのか?」

「愚問よ。貴方以外にいないでしょ、適任者は」


 そんな事はないかと思うが、確かにゾンビの知識があって、冷静に判断できるのは俺しかいないか。

 まあいずれ適任者が現れれば譲ればいいか。


「わかった。それじゃあ副リーダーとして二人を指名したいんだが、任せても良いか?」

「勿論、受けるわ」

「うむ。任せておけ」

「うん。よろしく頼むよ」


 そうして、そこから先は村神にも協力してもらい、他のメンバーの異能力の詳細を分け、今後のそれぞれの役割と、これからの活動方針について検討した。


 その作業は次の日の朝までかかり、完全に終わる頃には全員ヘトヘトで他の生徒から呼び出されるまで全員で寝坊してしまったとか。



短編で投稿しました。

連載して欲しいと言う方がいたら、ブックマークや高評価、感想など是非よろしくお願いします。

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