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『番外編 :小冒険記』

「こっちだよ…こっち」


「いや、絶対コッチ!」


僕はあずま君の携帯に映し出された地図に目をしかめ、右方向を指した。


周りには客で賑わうお店が所狭しと並べられている。店員さんと思しき人達が声を張り上げて客を呼んでおり、人々もガヤガヤと楽しそうに街を歩く。


そんな中で僕達はその活気に少しそわそわとしながらも地図と睨めっこしていた。


「あ〜〜もう分かったよ…。じゃあ、こっちに行こう」


東君は不貞腐れたように歩き出す。


「元はと言えば理玖りくがふらふら〜と…どっか行っちゃったのが悪いんだからな」


「だってカレーの良い匂いがしたんだもん」


僕は左手に持ったカレーパンを前に突き出した。


「理玖…カレーそんな好きじゃ無いと思ってたんだけど…」


「え…そんな事言ったけ?昔から好きだよ」


クリストルタワーで東君と同居し初めてから二日目。まともな私服を持っていなかった事に気付いた僕たちは服を調達するべく、街へやってきたのだ…けれども。


「どんどん目的地から離れて行ってる気がするんだけど…」


東君は携帯と必死に格闘している。


「赤い看板に白い文字が”ウニクロ”の目印だって西園にしぞの先輩が言ってたよ」


「う〜〜ん」


東君は携帯を顔にくっつけると、


「あ〜〜ダメだ!分かんね…!」


携帯をポケットに仕舞った。


「東君…!あの店じゃない!」


僕は赤色でキラキラ輝く看板に白い文字が書かれたお店を指差した。


「マー、マーメイドラブ…。理玖これ多分違うぞ…」


「え…でも、高級そうだし…」


「これ、キャバクラだぞ」


僕と東君は周りを見渡し、ある事に気付く。


「俺ら、風俗街に来ちまったみたいだな…」


「見たいだね…」


「早く出よう…俺ら未成年だし、こんな所にいるのを見られたら…」


引き返そうと僕は後ろを振り向く。


「ゲッ…!」


こっちを見つめる紅の髪をした少女が目に飛び込み、思わず僕は変な声を出した。


「どうした!リ…ク……」


東君もすぐに状況を理解し固まる。


普段は下ろしている艶やかな紅の髪を編み込んで結い上げ、純白のブラウスに濃紺のフレアスカー身を包んだ彼女。


シンプルであっても美しさと可愛らしさを混ぜ合わせた洋服があどけない人形のような容姿と良く似合っていた。


別の場面であれば彼女の容姿に見とれていたかもしれないが、今回ばかりは僕の中で不安と混乱が大きく上回る。


紅林くればやしさん…これ、これは…違うんだ。違う…というかなんといいますか。恐らく誤解でして…」


「清白君、あなた何言ってるのか分からないわ。言いたい事があるなら一回頭の中を整理してから言ったらどうかしら」


いつも通りのトーンで彼女は続ける。


「でも、貴方たちの一連のキョロキョロした行動を見れば、どういう事が目的か大体想像がつくから大丈夫よ」


これは怒っているのか、それとも呆れているのか。とにかくおびただしい雰囲気だ。


「随分な言われようだぜ。そっちこそ、こんな所になんのようだよ。まさか働いたり…」


東君も反撃を試みる。


すると、彼女の視線が一瞬殺気を帯びたような気がした。


「私はこの先のコーヒー豆専門店に行くだけだけど…」


あっさり返答した紅林さんは僕たちから視線を逸らすと時間を確認した。


「もうこんな時間…。清白君も東君も気持ちは分かるけど、大人になるまで我慢しなさい」


そう言い捨てると彼女は歩き去った。


「終わった……きっと明日から俺たちのあだ名はスケベだ…」


東君はひざまずく。


こうして僕たちの小さな冒険は終わったのだった。

(後日、西園先輩と服屋に行きました)

次話のみあずま視点で話が進行いたします。

よろしくお願いします。

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