『XV :Q&A』
「本当にありがとうございました!」
僕は深々と頭を下げる。
「No Problem!君に怪我がなくてよかったよ」
「でも、お金が……。3万円、必ず返します!」
「いいよ、いいよ。私がやりたくてやったことだから。君からのMoneyは受け取れないよ」
「ではせめてお礼をさせてください」
頭を上げて僕はそう食い下がった。
その時、ふとその顔に見覚えが有る事に気が付く。
僕は自分の記憶の中を探り必死に思い出そうと頭を回転させた。
「……あ!!!!入団試験の人!!」
「Yes!思い出した?」
この特徴的な喋り方にこのぼさぼさの髪の毛。何故もっと早く気付かなかったのだろうか。
「じゃあ、一つ君にお願いしようかな」
「はい、僕に出来ることなら」
「Come on with me(こっちについて来て)」
白衣の男と僕は路地裏に入って行く。
ある建物の前に着くと、彼は隠し扉のようなドアを入っていった。
「あ、あの…僕たちはどこに向かっているんでしょうか」
彼は僕の質問に答える代わりに電気をつけた。
そこには研究室が広がっており、実験の機材などがあちこちに散らばっていた。
「Welcome! ここは僕の研究室兼自宅さ…!」
嫌な予感がした。
「もしかして僕の事解剖したりしないですよね…」
「Don't Worry 、流石にそんな事はしないよ」
ひとまずその言葉に安堵する。
「さて、Mr.清白…君にいくつか質問をしてもいいかな…?」
「はい…」
その時、
”キーーン”
「痛っ………!」
急な頭痛に僕は頭を抑える。
「Are you Okay?」
頭と体がはち切るような感覚が続く。
「大丈夫です、最近よくあるので…」
しばらく歯を食いしばっていると頭痛は治った。
一呼吸し、話を遮ってしまったと思い僕は慌てて話を再会させる。
「で、質問というのは…」
彼は横にある椅子に座り足を組むと、
「あの日、入団試験の日。君は何をしたんだい?」
唐突かつストレートに聞いてきた彼は真剣な面持ちで僕の返答を待つ。
「……。」
「それがよく覚えていないというか、自分がどうやったのか分からないというか…。それよりもカメラで監視していたあなた達の方が状況を把握していたのではないんですか?」
「それが私たちは凶獣にカメラを破壊されて、何が起こったのか把握できていないんだよ」
それを聞いてある疑問が念頭に浮かぶ。
「では何故試験の様子が把握できていなかったのに僕は合格したのでしょうか…?」
「それはMr.桐王が真っ先に君を推薦したからだよ」
「え…桐王さんがですか?」
「彼は緊急時に君たちを助けるために出動していたからね。そこできっと何かFantasticな物を見たんだろうけど、いくら聞いても理由を教えてくれないから直接本人に聞こうと思ったんだ」
僕は頑張って記憶の糸を手繰り寄せる。
「…すみません、うまくあの日の出来事を言葉にできなくて…。僕の植物軍器が白く光ったような光ってないような…」
「白く光るFuranza…How Interesting…それを今見せてくれないだろうか」
「はい、でも燃料である太陽光の瓶が…」
「生憎僕も今は持ち合わせていないんだ。展開するだけでいい…少し見せてくれ」
「わかりました…」
僕は鞄をおろし右手から黒い剣を出す。
「Wow これが君のFuranzaか」
彼は近づき僅かに白い光を放つ剣をまじまじと見つめる。
「Unbelievable!信じられない、なんだこれは。燃料なしでこれほどのものが展開されるのか…!」
確かによく見ると燃料がないにも関わらず、僕の植物軍器は前よりも硬く武器らしくなっている。
前はもっとふにゃふにゃだったんですけど、最近は燃料なしでも剣の形を保っているというかなんというか…
「あ…!」
突然大声を上げた僕に彼は少し驚いた。
「そういえば試験の時、燃料が無かったんですけど植物軍器が使えたんです」
「…What…⁉」
彼は信じられないという表情を僕に向け、僕の右手の剣に視線を落とした。
「そんなことがPossibleなのか…。知っていると思うが、Furanzaは植物だから使用するに当たって養分が必要だ。それを補うために使用者から水分を吸収し、燃料の瓶から太陽光を吸収することで光合成をし、養分を生み出している。だけど君のFuranzaはそれを必要としない……」
彼は椅子に座り直ししばらく考え込む。
「Maybe it's absorbing something else. (何か他の物を養分として吸収しているのか…)」
彼は小声でそう呟くと、
「よければ君のことを少し検査させてもらえないだろうか」
僕の植物軍器の謎が解明されればもっと強くなれるかもしれない、何より僕の体に何が起こっているのか知りたい。
僕は彼の提案を二つ返事で了承した。
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30分ほどの検査を終えた僕は帰るための支度をしていた。
「では僕はこれで失礼します」
忘れ物がないことを確認し立ち上がった時、まだ大事なことを聞き忘れていたことに気付く。
「…その、名前を伺ってもいいですか?」
彼も今思い出したのだろう、少し驚いた表情を浮かべた。
「ああ、まだ名乗ってなかったね。サムだ」
笑顔でそう答えた彼は右手を差し出す。
「Mr.清白、今日はありがとう。結果が出次第、必ず君にも伝えるよ」
「はい…サムさん、お役に立てて何よりです」
僕は彼と握手をする。
硬い手触りに少し違和感を覚えながらも僕はドアを開き彼の研究所を後にした。
少し向こうから聞こえる賑やかな声と光の方へと歩を進める僕は彼と握手した右手を見つめる。
あの鉄のような感触…
「義腕……」
僕は何か頭の隅に引っ掛かるものを感じたのだった。