『Ⅻ :新入2』
その後、その場をあっという間に渾沌にした二人はすぐに他の団員らしき人たちに外に引きずられていった。
波乱のスタートを切ったスピーチは他の団員により続行され、僕たちはヴィクテマについての大まかな説明を受けた。
『では最後に配属班との顔合わせを行います』
ステージ後方のスクリーンに班名と部屋の番号が示された一覧が写し出される。
『各自自分の班の横に書かれた部屋番号を確認し、そこへ向かってください』
そういうとステージに立っていた男は舞台裏へ戻っていき、みな一斉に移動を始める。
「理玖、俺らもいくぞ」
「そうだね」
僕は最後にもう一度スクリーンを確認し、415号室へと向かった。
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僕たちは「415」と書かれた部屋のドアを開く。
学校の教室ほどの大きさの部屋の真ん中には長机が置かれていた。
僕は入ってすぐに視界に飛び込んできた紅髪の少女の姿に、
「え、紅林さん……」
僕は喜びと驚きの余りそう呟いてしまった。
「清白君、東君、こんにちは。あなたちも同じ班のようね」
「そうみたいですね…」
「おう、よろしくな」
すると、
「え〜〜マジかよ〜〜〜」
その聞き覚えのある声に思わず身体が固まる。
振り向くとそこには金髪に猫のような目をした少年が窓に寄りかかっていた。
「よークズ白君、一昨日はカレーパンありがとね。それにしても、クズ白君が合格したみたいな噂が流れてたけどまさか本当だったなんてね。ああ、ごめん、見学だった?」
「えへへ……」
僕はいたたまれなくなってヘラヘラと笑うと、東くんが庇うように僕らの会話に割って入る。
「天羽…!流石にそれは言いすぎだろ。理玖だって自分の実力で入ったんだ、その言い方はねーだろ…!」
「東、俺はこんなクズが仲間だと困るって言ってんだよ…!」
部屋全体に緊張が走る。
バーーン!!
すると、突然大きな音と共にドアが勢いよく開き、ツインテールにオッドアイの少女が部屋に飛び込んできた。
「くっくっ…く…!」
謎のポーズと共に彼女は不気味に笑う。
「ようこそ神討伐選抜隊雨夜班へ…。堕天使に導かれし君たちをこの天使の使徒である私が歓迎しよう。ではまず、名乗るんだ諸君…!君たちが本当に選ばれし者なのか、私のこの呪われた右目で見極めてやろう。この右目はわた……」
突然電気が消え、部屋が静まり返る。
「はいはい、そこまでー。新人が困ってるから」
おっとりした声と共に明かりが戻り、小太りの彼は続けた。
「いやー待たせてごめんね。少し呼び出し食らっちゃってて…」
彼は申し訳ないという表情で手を合わせる。
「おい西園、私が話している途中に電気を消し、それうえ話を遮るとはいい度胸だな」
彼女はかなり不満そうな表情を浮かべて続けた。
「あのセリフは初めて会う人にしか言えないんだぞ…!こんなあと何回あるか分からない貴重なチャンスを潰した罪は重い!」
「で、でも…でも…ドアを蹴飛ばして入るのはよくない…と思うな」
小さな声でそう言った小柄で紫髪の少女は、皆の視線に気付き慌ててドアの後ろに隠れる。
「自己紹介が遅れたね。僕は西園夕輝、この頭おかしいのが雨夜舞子、あそこに隠れてるのが三芳野咲来だよ。ようこそヴィクテマ、…そして第三部隊雨夜班へ…!」