表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/51

『Ⅹ :本望』


肌寒い風に吹かれながら白い電灯の下のベンチに座っている2人の少年がいた。

体をハリネズミのように丸めている彼らは携帯をじっと見つめている。


そう、今日は入団試験の結果発表の日。


僕とあずま君は昼頃に送られてくるであろう試験結果を今か今かと待っているのだ。


「まだかな〜」


「いや、そろそろだ。きっと…」


東君は携帯に視線を向けたままそう返答する。


試験中にハプニングが起こったものの、教官いわく僕らグループ10も合格の可能性が無い訳では無いと言われた。


特に東君は僕たちのグループで唯一バッジを持って帰ってきたため、合格の可能性は高いと僕は思っている。


僕はどこまでが本当でどこまでが夢だったのか分からないが、あの化物ヘビに殺されなかった賞…的なのはポイントが高くはないか…。


そんな淡い期待を頭の片隅で抱きながらも、かれこれ待ち続けて1時間が経とうとしている。


「あ!きた」


「え!え、…」


慌てて僕もメールを開く。




[ヴィクテマ入団試験結果]

                              清白理玖殿


このたびの入団試験においてあなたの能力を高く評価し、ヴィクテマへの入団を決定しここにご通知申し上げます。


今後、あなたの能力と経験を十分に活かし、この都市の安全と発展へ貢献くださいますようお願いします。


                     

施設総会長 弥園照明


ヴィクテマ総隊長 桐王実弥




「やった…やったよ!」


思わずベンチから飛び跳ねる。


そしてはっと思い出したように慌てて東君の方を見る。


「くそ〜、なんでだよ。」


彼は両手で顔を覆ってシクシク声をだしている。


「東君……」


僕はどうすればいいのか分からずおどおどしながらその場をクルクル回る。


「どうしよう、どうしよう…」


僕が謎の動きをしていると、


「なんてな!落ち着け理玖、受かった、受かったよ」


僕は状況が飲み込めず、棒立ちのまま頭を整理する。


「だから、嘘だって。ごめんごめん、ちょっとからかってやろうとと思って」


その言葉でやっと状況を理解する。


「お願いだからやめてよ〜、僕がすごい喜んじゃったからどうしようと思ってすごい困ったんだから」


肩に入っていた力が抜けた。


「もう一つメールが来てるぞ」


東君はそういうともう一つのメールを開く。



                              東亨哉隊員


あなたは本日をもって第三部隊雨夜班へ配属されました。

            

明日1時30分にクリストルタワーへ集合してください。




「同じ班だ!」


「まじか!」


東君は僕の携帯を覗き込む。


「本当だ!やったな」


しかし、本当に信じられない。


まさか僕が受かるなんて。落ちこぼれの僕が。なんでだ…?


これは夢ではないのか。いや夢なのかもしれない…。


「東君一つお願いがあるんだけど」


僕は真剣な表情で東君の方を見る。


「なんだ」


「僕のほっぺを思いっきりつねってほしい…」


「わかった」


東君も笑うのをやめ、真剣な表情で僕の両頬をもつ。


そして彼は真顔で物凄い力で僕の両頬をつねる。


「イタイ!イタイ!イタイ!ストップ…東君ギブ…」


僕はあまりの痛さに足をバタバタさせる。


東君は苦笑すると僕の頬から手を離した。


「よし。どうだ?夢だったか?」


「イタイよー、痛すぎだよー。何も本気でつねること無いじゃないかー」


真っ赤になった頬に手をあてながら不満そうにぼやく。


「すまんすまん。理玖がもがいてるのが面白くて」


「もー」


「ハハ。でも、夢じゃなかっただろ?」


「…うん」


……でもやっぱり、夢みたいだ…。


僕はジンジンとした頬の痛みを噛み締めながら空をあおぎ見た。空には今日も今日とて満点の星空が広がっている。


僕は何かに触れるようにに空へ手を伸ばす。……そして、掴み取るようにその掌を握った。


僕はあの時とは違う…。

ここから始まるんだ僕の本当の人生たびが…。




『あ〜…僕の出番まだかな〜』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ