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6、公爵令嬢の侍女 コレット

高評価つけていただき、ありがとうございました!

とても励みになります!

オストワール王国を建国以来支えている公爵令嬢エリカの生家ザラニーニ家には、彼ら一族に代々仕える使用人が表にも裏にも沢山いる。コレットも代々ザラニーニ家に仕える家系の娘で、幼い頃よりザラニーニ家息女のエリカ専用の侍女として仕えていた。


コレットは、ずっとザラニーニ家一筋に仕えていたので、ザラニーニ家以外の家がどんなか知らなかったが、エリカが学園に入学してから、他の侍女と話すようになり、いかにザラニーニ家の使用人が恵まれているのかを知ったのだった。


それは給与や休養などの労働条件だけでなく、主人たちの従者への扱いからして違ったのだった。他の家の主人達は、使用人の名前は覚える事はまずない。失敗すれば、給与を減らすばかりか制裁を加える家があるという。また、使用人という立場上抵抗できないのを分かっていて、侍女に体の関係を迫る主人もいるという。なんとも、コレットにとって信じられない環境だった。

仕えるお嬢様に花瓶を投げつけられたと言って、目の周りが青くなっている他の公爵家の侍女に、コレットは今日もそんな話を聞いたのだった。


末端の使用人まで覚えるのは、さすがに無理な話だが、ザラニーニ家の人々は、自分の身の回りの世話をしてくれる使用人の名前はもちろん憶えているし、一人一人「人」として、ちゃんと接してくれている。女主人である奥様もとても優しい方だし、その子供たちも奥様に似たのか、とても優しく、大切に扱ってくれている。ちなみに、家の中で一番厳しいのは、コレットの両親でもある執事と侍女長だ。


コレットは、敬愛するエリカお嬢様を学園に送り出した後、幼い頃の思い出を思い出していた。


コレットから言い出したイタズラを二人で実行した際、即座にバレて、執事である父親に烈火のごとく怒られた際は、エリカ()()コレットをイタズラに誘ったのと庇われた事もあった。護衛に就く必要がある為と言って、父親にしごかれ、体中痣だらけになっていると、貴族しか使わないようなとても高級な薬を渡してくれた。エリカ自ら塗りたそうにしていたが、さすがにそれはコレットが遠慮した。「エリカ様に仕えるのであれば、馬鹿では駄目だ」と言われ、山のような本を母親から渡された時は、あまりの量の多さに、どうしようもなく大泣きしたコレットだったが、私と一緒に読みましょうと言って、エリカはわかりやすく解説してくれた事もあった。


そんな優しいエリカお嬢様が、最近元気がないことに、コレットは薄々気がついていた。確かに、学園に行けば色んな事が起き、悩むことも出てくるだろうが、コレットとしては自分の主に元気がないのは、とても辛い。使用人全体も気づいているらしく、コレットが代表して、何となくエリカに伺ってみると「コレットって、恋をしたことはある?」と聞いてきた。



え!?

お嬢様、恋ですか?

それは、ひょっとして殿下以外に好きな方が!

まさか、最近元気がないのは、恋煩いのせいですか!?


と、コレットも他の使用人も焦ったが、後で学園に入り込ませている「影」に確認した所、恋をしたのは、エリカお嬢様ではなく、まさかの殿下の方だった。


とりあえず、「影」には引き続き情報収集を継続させ、コレットは侍女ネットワークを生かし、自分も精力的に、情報を収集することにしたのだったが、それからというもの、お嬢様は、日に日に元気がなくなり、食事の量もみんなが気づくほど減っていったのだった。しかも、「お妃以外に、私にはどんな道があると思う?」と聞いてくる始末。

  

そんなある日、久しぶりにお嬢様がとても嬉しそうにしていたので、コレットは尋ねてみると、「久しぶりに殿下が、私に声をかけてくださったの!それでね、『僕は真実の愛を見つけたんだ!』と言ってくれたのよ!」と、それはそれは嬉しそうにコレットに伝えたのだった。しかし、コレットは先に「影」から聞いていた。殿下がそう言った現場には、殿下の思い人とされる男爵令嬢も居て、その男爵令嬢をそれは熱く見つめながら、殿下は先ほどの言葉を吐いていたという事を。


「お嬢様は、現実を受け入れられず、自分に言われたと幻想を見たに違いない」と憐れに思っているコレットの気持ちには、エリカは気がつかない様子で、「さあ、コレット!今以上に殿下を支えなくてはね!」と言うと、当のエリカ本人はウキウキした様子で、コレットにいくつかお願いごとをしたのだった。もちろん、コレットは、殿下がどうであれ、敬愛するエリカお嬢様のお願い事は、ザラニーニ家の使用人たるもの、全力で叶えるつもりである。


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