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15、伯爵令嬢 マリアンヌ

オストワール王国の貴族の数は、この国の総人口と相対すると果てしなく少なく、国王から自分の領地を拝領し、領地を治めている。教会とは別の特権階級と言えるだろう。


伯爵令嬢のマリアンヌもその特権階級の家の1つである。


家も「伯爵」の位を得ているので、貴族階級の中でも、大体真ん中に位置する。とはいえ、この特権階級とされる貴族の家は、国全体で500程あり、マリアンヌの前に200家程も「上」がいる。


つまり、マリアンヌの「伯爵家」は、身分は決して低いわけではないのだが、この学園に入ってしまえば、全くと言っていいほど、特権階級でもなんでもなく、ましてや王家や公爵家など、足元にも及ばない。自分の家がそこまで中央に食い込んでいるわけでもなかったので、学園に入るまで面識すらなかった。


よって、同学年とはいえ、殿下やエリカ様と、3年間一度もクラスが全く被ることもなかったマリアンヌにしてみれば、彼らは、遠くから眺めている別世界の神々しい人々でしかなかった。もちろん、彼女も年ごろの乙女なので、王家と公爵家に憧れのようなものはあったが。





「・・・・・という理由と証拠により、これまでのシャーロット嬢へのいじめと思われる事柄の数々は、彼女自身による自作自演と断定してよろしいかと!」


王太子ラインハルト殿下とその婚約者エリカ様の不仲が聞こえてきて久しく、ひょっとしたら、今回のパーティーで殿下は、彼女との婚約を破棄するのではと噂が、学園中に回っていた今日この頃。


多くの生徒が見守るなか、パーティーに一人で出席したエリカ様を見た殆どの参加者が、同情的な気持ちで彼女を見ていた。クラスこそ違えど、同じ学年だった為、自身も卒業パーティーの参加者だったマリアンヌも、そういった気持ちの一人だった。


だがしかし、蓋を開けてみれば、なぜかエリカ様の独壇場。


最後にエリカ様が、シャーロットの自作自演を断言した後、殿下は


「良くここまで調べた!さすが私のエリカだ!」


と叫んだかと思えば、エリカ様の元へ走って近づき、抱き寄せていた。

あまつさえ、愛おしく彼女の髪を撫でているではないか!


おそらくこのパーティーの参加者のほとんどが「は?」と思ったに違いない。

それは、さっきまで王太子の横で、被害者然としていたシャーロットも同じらしく、これでもか!という位、目を見開いている。



転入当初こそ、みんな様子見の状態で、話しかけなかった為、シャーロットは一人でいる事が多かった。しかし、だんだん学園に慣れてきて社交的になったと思ったら、仲良くなるのは男子生徒ばかり、しかも恋人や婚約者がいる人いない人関係なく仲良くなっており、女子生徒からは大層評判が悪かった。しかし、仲良くなる男性全てがこの国の重鎮の子弟ばかりな為、いじめるなど、後の事を考えると怖ろしく、みんな何も出来ずにいたのだった。


そんな中で、シャーロットが「いじめられている」と噂になった時は、みんな半信半疑だったのだ。なので、ジークハルトと仲良くなった時には、「きっと彼を落とす為の自作自演なのだろう」と女生徒の多くは見ていた。


しかし、状況が変わったのは、シャーロットが王太子と仲良くなった時だ。今まで、いじめられているとは言え、誰が行っているのか特定出来なかった。しかし、殿下と仲良くなってからは、首謀者が「エリカ様」とそのお友達と、人物が特定され始めたのだった。


確かに、彼女には、対抗できるだけの後ろ盾もあり、どこまで本当なのかわからないが、いじめに関する噂の数々はどれも具体的で、状況的にも彼女がとても疑わしかった為、同情こそすれど、「やはり彼女も嫉妬するのだな」という空気になっていた。


殿下もシャーロットに対するエリカ様の噂されている行動に眉をひそめ、エリカ様とは会っても会話もしないし、最近では目を合わせることもない位、仲は冷え込んでいると誰が見ても明らかだったのに...



なのに

目の前の熱い抱擁は、いったい何なのっ!



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