25 回り道しなければならん理由
何日かして、津島君から携帯に電話がかかった。祠がきれいにできあがったという。
「時間があるときにでも寄ったら」
と、ぶっきらぼうに言う。すっかり慣れた私は、気にしない。歓迎してくれていることはわかったから。
その翌日、お地蔵様を見に行った。三角屋根がかけられ、合わせ目のところには瓦がつけられていた。破風板もしっかりつけられ、垂木も何段かになってついていた。豪華ではないけど、立派だと思った。手作りのあたたかさが感じられた。
「よかったね、お地蔵様」
私があいさつすると、「ご苦労じゃった」と、なつかしい声が聞こえた。
「お地蔵様が部屋からいなくなって、ちょっと寂しいです」
私が本音をもらすと、「いつでも会えるじゃろう」と明るい声がかえってきた。
「そうですね。また来ます」
帰ろうと立ち上がり――そうだ、疑問に思っていたことを聞かなくちゃ、と思い出した。
「ひとつ、いいですか?」
「よいぞ」
「思ったんですけど……津島君のおばあさんの夢の中で頼めば、一発でここに祀ってもらえたんじゃないでしょうか……。どうして私に頼んだのかなあって……」
お地蔵様に、動揺の色が見えたように思ったのは気のせいだろうか。お地蔵様はこほん、と咳払いをしたあと、ぼそりと言った。
「回り道しなければならん理由があったのでな」
夏休みは後半にかかっていた。今日も暑い。午後は妹を連れてプールにでも行こうかな。津島君は何してるんだろう。お参りしたあと、声をかければよかったかな。
まあ、いいや。これから学校が始まったら、常夜灯マップも作らなきゃいけないし、文化祭まで話す機会はたくさんある。またあんなふうに笑いかけてくれるかな。
常夜灯以外のことも、いろいろおしゃべりしたい。まずは、七不思議のこと……だよね!
私がそんなことを考えている時、お地蔵様はひとり言を言っていた。
「恋のきっかけをつくるっていうのは、まどろっこしいもんじゃのう……じゃが、気持ちが若返った」。
(終わり)




