24 あの時の少女は……
「考古学者になるだなんて……ますます女の子に縁がなくなっちゃいそうで……心配なの……」
また息をついて口をつぐんだ。だがすぐににっこりして言った。
「でも、あなたみたいなお友だちもいるってわかって、少し安心したわ。怖がりのくせに、しっかりしてて見直したって、都望ちゃんが言ってたのよ」
どきん。津島君が私のこと、ほめてくれた……? 胸のどきどきが大きくなる。おばあさんは私の顔をまたじっと見て、表情をぱっと変えた。
「ああ、やっと思い出したわあ! あなた……私が小さいころ、迷子になってたときに助けてくれた女の子に似てるわ!」
おばあさんはもやもやしたものが晴れたように、すっきりした表情をしている。小さいころ、迷子になってたときに助けてくれた女の子に似てる。私ははっとした。
「迷子になったって、いくつくらいの時ですか」
私の胸の鼓動は大きくなっていた。
「よく覚えてる。ここに引っ越してきてすぐだから、中一の終わり。中二にあがる年よ」
えっ!
「このあたりを散歩してたのに、迷路みたいなところにはまってしまって、気づいたら大きな岩のところにいたの。その時は知らなかったけど、その岩、夜泣き石ってよばれている不思議な石だったの。知ってるでしょ」
私はうなずいた。知ってる。夜泣き石のこともそうだけど、おばあさんのことも!
私が夜泣き石で助けた女の子は、このおばあさんだ。まちがいない。なぜ何十年も前の、少女だったおばあさんに出会ったのかわからないけれど……原因が、時空のひずみだってことは、わかる。時空――時間と場所。それが狂っている空間。
「家の近くにきたら、その女の子がいなくなっちゃってね。お礼を言えなかった。いま、そっくりのあなたに言ったら、あの子に言ったことになるかしら。あら、なんだかそんな気がするわ。おかしいと思わないで聞いてね。あのときは、ありがとう」
おばあさんが私に頭を下げた。どう反すればいいかわからずにもじもじしていると、津島君が板や木材を小脇に抱えて戻ってきた。
「三角形の屋根のところが難しいから、そこは父さんに手伝ってもらわないと。とりあえず、四角形の枠組みだけやっておくよ」
津島君はそう言って、慣れた手つきで組み立て始めたので、おばあさんと私はまた手伝い始めた。おばあさんはほとんど見守っているだけで、かといって何もしないわけでもなく、津島君とうまく呼吸があっていて、とどこおりなく作業が進んでいく。私がやることはないみたいだったけど、おばあさんが時々指示をしてくれて、お地蔵様の祠づくりに少しは協力できた。
祠はできあがり、お地蔵様はその中に納まった。高床になっていて、お地蔵様の台座もつくってあった。屋根がつけば、それなりに格好がつくだろう。私たち三人はしゃがんでお地蔵様をおがんだ。「ありがとう」という、お地蔵様の声が聞こえた。津島君にも聞こえていたと思う。津島君の顔をちらっとのぞくと、向こうも私の顔を見て、にっこり笑ったから。こんなふうに津島君が笑った顔――初めて見た。悔しいけど……すてきな笑顔だった。




