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15 常夜灯と鞘堂

夏休みに入った。私と津島君の常夜灯(じょうやとう)鞘堂(さやどう)取材が始まった。準備はばっちりだったし、雨も降らず、トラブルもなく進んでいた。津島君は、写真や計測を担当し、私は記録係。


実際に常夜灯を調査していくと、大きさも形も、柄も、少しずつ違う。竿(柱)の形も、津島君のおばあさんが言っていたように、江戸時代のものは円柱が多いけど、現代に近づくに従って四角柱になったり、そった曲線になっていたりする。

鞘堂も、屋根の形や彫刻などさまざまあって、観ているだけでも飽きることはなかった(中には鞘堂のほうが立派だと思える常夜灯もあった)。豪華(ごうか)なものほど、人びとがお金をかけて作ったということであり、それが根津治への信仰の強さを示していたという。


自治会の方がついてくれるときは、常夜灯にまつわる話を聞けるのでうれしかった。もとはどこにあったのか、とか、常夜灯に火を灯すことがあるかどうかや、おそうじはどうしているかや。

「若いのにえらいねえ」と言って、冷たい麦茶を出してくれる会長さんもいた。私はお礼を言って、いただいた。でも津島君は「いいです」と言って遠慮する。汗びっしょりになってるのに。

 私が「せっかくのご好意だからありがたく受けたほうがいいんだよ」とこづいて、手渡した。しぶしぶ受け取った津島君は、ごくごくと音をたてて飲んだ。会長さんがうれしそうに津島君を見ていた。まったく、変なところで生真面目(きまじめ)なんだから。


取材四日目に、私がお地蔵様と出会った鞘堂に行った。話すなら、この日だと決めていた。まるでそれを知っているかのように、自治会の会長さんは留守で、約束どおり鍵を開けた状態にしてくださっていた。

「高さ、一メートル七〇センチ」

「幅、六〇センチ」

 常夜灯は形がずんどうではないので、竿の底部の幅を測ることにしていた。私は津島君の言葉をノートにせっせと書き写す。


 一通り終わったところで、思い切って切り出した。どういう流れでもっていくか、今まで何度もシュミレーションしたのだ。


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