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11 常夜灯マップ作り動き出す

 翌週の集まりで、津島君は「ほら」と言って、『園遠矢(そのとおや)東部の常夜灯』という本を差し出した。薄い白黒の本だったが、中を開くと、常夜灯の写真がずらりと並んでいた。鞘堂(さやどう)がかかっているものは、鞘堂の外観写真も掲載されていた。住所、常夜灯ができた年月日、刻まれている文字。高さ、幅。移動したかどうか。現在どこが管理しているか。市の有形文化財に指定されている常夜灯もあった。常夜灯や鞘堂の、各部の呼び名(名称)まで、イラスト入りで丁寧に書いてあった。


「すごい……」

 知りたかったことが全部書いてある……こんな本があるなんて、想像もしなかったし、まして東部だけでこんな、百灯近くもの常夜灯が残っているとは、思いもしなかった。

「この本……」

 私が言いかけると、津島君はひとこと、「ばーちゃんの」とつぶやいた。

「ありがとう。助かった」

 私は本当にうれしかった。


「図書館に行けば、もっといろんな本があるかもしれないね。あたし、調べてくるね」

「それなんだけど」

 津島君はたんたんと話す。

「西部の常夜灯の本はなかった。根津治山(ねづちさん)に近い東部には数多く残ってたから、本になったんだって。この本を出した教育委員会に聞いてみたけど、西部のほうは数も少ないし、本にまとめる予定もないって」

 企画を出した私が何もしてないうちに、津島君はそこまで調べてくれていた。すばやい!てか、私、だめじゃん。


「それでさ。まだ形になってない、西部のマップを作ったほうがだんぜんおもしろいんじゃないかと思うんだ。もちろん、それはおれの意見だから、佐々木さんがどうしたいかだけど」

 私が次に感心したのは、こんなに長く、津島君がしゃべっていること。一対一でちゃんとしゃべるのは、初めてのことだ。自分の意見を言ってくれて、そして、私の意見を聞いてくれている……。会話が成り立っている!


 西部といえば、私がお地蔵様と出会ったあの常夜灯も、西部に入る。のどかな田舎の景色と、朽ちるのは時間の問題という古い町並みが思い出された。あそこを、常夜灯を探して歩くのは、きっと楽しいにちがいない。

「私も、西部の常夜灯マップがいいと思う。あのへんの風景、大好きなんだ」

 私は喜んで賛成した。津島君は、

「じゃあ、それで決まり。で、これが、西部に残ってる常夜灯の一覧」

 と言って、一枚の紙を出した。教育委員会からFAXしてもらったのだという。はー。どこまできがきくんだろう、この人は。


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