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まだギルベルト様語りです
ギルベルトにとって勇者などは架空の人物として捉えていた。まさか自分がその運命を歩まねばならないなど1ミリたりとも考えていなかったと全国に伝えたいほどに。
100%の相性など、奇跡に近い。
だからそこ、この世に1人だけである。
それは、国民全員が知る事実であり、運命の相手だとされたいた。
近年でその相性を持ったトルトリア家の娘とその婿は、信じられないほどの魔力をエネルギーとして貯蔵し、この世界に電気という物をもたらしたと言われている。
それによって爵位を持ったトルトリア家は、今では有名な子爵家として多くの発明家を生み出してきた。
そう、近年というのは80年ほど前の出来事である。
その1つ前はその出来事の70年前、その前も100年ほど前の事だ。因みに勇者という伝説の人物は今から5700年ほど前に存在していたとされている。
近年の事に関してもその事実を知る人間が生きているかも分からないのに、まさかそれが自分に当てはまるなんて誰が思うだろうか。
既に魔物を多く倒し名を広めてしまったというのに、これ以上目立つことはあまり嬉しい事ではなかった。
鑑定書で少しでも数値が出た者達が自分のパートナーになろうと言い寄ってくる事にもうんざりする。更に言えば、最も数値が高いある子爵家の娘が、最早自分がパートナーであるかのように振る舞ってくる事には何度無視したくなったか。
昔よりいた婚約者に対して、自分の方が婚約者に相応しいと社交の場に出た都度言っているらしい。
本当に忌々しい。
確かに、パートナーによって婚約者を変える者も多いのは確かだ。
パートナーには同性も当てはまるが異性のパートナーも多く存在し、パートナーとなれば2人きりになる瞬間も増え、そして口づけによって魔力分与という行為が可能となる為、そのまま2人が結婚した方が良いのではないか。という事が婚約者を変える原因である。
私の婚約者とも異性のパートナーが見つかった際は婚約は解消するとお互いに決めており、未だ解消されていないのは相手が同性をパートナーとしているからである。
貴族としての義務とは分かっているものの、張り付けの笑顔を常に取らねばならない相手との婚約というのも些か不満であり、その婚約者と相性数%の奴らのいざこざというのは、かなりストレスとなっていた事は否めない事実だろう。
だからこそ、少しでもパートナーがいる可能性がある所を回り始めて約2年。ようやく見つけた相手というのは本当に嬉しい出来事なのである。
しかし、色々と問題はありそうだ。
まず、なにより平民のレティシアを自分の中に引き摺り込まなければならないのだ。
「懐きにくそうだな…」
フワフワとした茶色い髪に、澄んだグリーンの瞳。
野生の可愛らしい小動物が威嚇しているようだった。
いつか絶対に手懐けたいと思う。
会った瞬間に抱きしめてキスをしたいと体がねだったのは初めての経験だ。身体中の魔力が反応し、あの子の魔力と溶け合いたいと願ったのだろう。正直手を掴むだけで抑えた事に称賛を得たいくらいだ。
ギルベルトは、さて、まずは母親に相談からだなと、頭をフル回転させて今後の対策方法を考えていくのだった。
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