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ギルベルト視点
ギルベルトは今回の旅は、ただ倒す事が面倒な魔獣を押しつけられたのだと理解していた。
動きが早い魔獣は単独で戦った方が仕留めやすい。
特に魔剣士で、速さもそこそこなギルベルトであれば割と簡単に倒す事が出来るだろう。更にはレティシアに魔力を向上して貰えば確実に勝てると見込まれていることも知っていた。
恐らく『運命のパートナー』と噂される平民の2人に対して王族を介入させるでもなく、その強さを見せつけてその噂が嘘であると証明させたいだけである。
幾度となくあの陛下には面倒を押し付けられている為に、今回の事も説明されずとも頭の中を見ることができた。
実は、母から婚約者について決着がつきそうだとの連絡が昨日来ていた為、早く片付けその連絡を待ちたい程には緊張などしていない。
寧ろ、レティシアを婚約者にする気満々の母への感謝と、婚約者になった時を想像しての興奮によってどうにかなりそうであった。
彼女の気持ちは自分に向かなくとも婚約者として側に居てくれるだけでも満足に思う。
そんな言葉で母があそこまで味方になるとは想定していなかったとはいえ、かなり良い誤算だ。
だからレティシアに対しても軽くからかう事は、彼にとってその興奮を隠し切れていないどうしようもない行為だったのである。
『決めたのは、私の意思だよ。ギルベルト・ファン・ザヘメンドとして告げる。後日、正式に伝えるから覚悟するように』
しかも彼女が「私なんか」と言うものだから、ついムキになって本心を伝えてしまった。
やってしまったという気持ちと、これで本心に気がついてくれないかという気持ちが交差して気持ち悪くなったギルベルトは、先程から呼ばれていた騎士団の団員へと足を進めた。
ふとレティシアの方を見ると、バチリと音が走るかと思うほどしっかりと目が合う。
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