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彼は私を横目で見ると、ひらりと手を振りながら扉に近づいて行った。
「そうだ、先ほど言いそびれていた」
「なんですか」
「……パートナー同士でのキスは、とても気持ちが良いらしいよ」
「…………なに」
なに言っているだと言おうとした口を閉じた。
彼は少しだけこちらを振り返り、赤い舌をぺろりと出してにやりと笑う。
「また明日、私のレティシア」
きっと私の顔は真っ赤な事だろう。
お前のじゃないわぁ!と心の中で叫びながらつい金貨を床に投げつけていた。
「ああ!しまった!」
棚の間にころころと入っていった金貨を箒を使って取り出しながらため息をつく。
既に10粒くらい購入したいという人が6人位いる。しかも期限はあと5日位でほしいという。作らない選択肢はない。
つまり、ギルベルト様と確実に顔を合わせる事になるのだろう。
「私の頑張りすぎない生活が……」
確実にその、頑張りすぎない生活が終わったのは今日この日である事は間違いない。
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ギルベルトは帰る馬車の中でにやけそうになる顔を経験の力によってにこやかな顔へと変化させていた。
ようやくパートナーが見つかった喜びは、普通の人では分からない事だろう。
レティシアのいる学校では、魔力反応機と呼ばれる機械によって自分の魔力相性90%の人間を見つけていた。そこには特に何パーセントと表示される訳ではなく、単純にピコリと反応するだけ、だから自分が相手と何パーセント相性が良いのかが出る事はない物だ。
対し、ギルベルトの学校では鑑定士が出てきて、1人ずつ鑑定してもらえる。しかも誰と何パーセントの相性なのかを表で出してもらえる鑑定書付きだ。
魔力が多くなるほど見つかりにくいと言われているが、彼の学校では半数の人間が見つけることができていた。
それは、魔力も家系に影響される為、相性が高い家系の中に90%以上の人間がいる可能性が高く、誰と何パーセントの相性なのかを判断できるその鑑定書によって高い確率で見つけ出せていたからだ。
また、貴族でよくあることだが、学園を卒業してしまえば相性のよい人物を見つけ出す事は容易ではなくなる為、政略的に悪くなく、魔力相性80%以上であればパートナーとして認めても良いという暗黙のルールが存在していた。
ギルベルトは誰もが憧れるほどの魔力を持っている。
だが、パートナーの鑑定書には全ての人間が20%以下、そんな事普通はあり得ないと鑑定士たちが騒ぎ出す始末で、貴族社会に染まっている父親は血眼になって学園に所属しない様々な貴族達とも鑑定をさせていった。
しかし、結果はどれも同じ。
そんな中、鑑定士達は口を揃えてこう言った。
『恐らく、ギルベルト様は100%の相性の方がいるだろう』
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