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少しだけ遡ります!
陛下の命を受けてから約5日後、ギルベルト達は魔獣を倒すため、森へと足を踏み入れていた。
今回倒そうとしている魔獣はこのまま成長すれば『世界の災害』となりえる魔獣である。
ただでさえ強いグリフォンの進化形態だと歴史書には載っているため、ギルベルトとレティシア、そして『運命のパートナー』として噂をされている平民2人に加え、騎士団の中でも特に優秀とされる団員達を集めた総勢40人体勢で今回の討伐に臨んでいた。
しかしながら、ギルベルトは騎士団には所属していないが、国に認められた魔剣士である。1人であっても頼もしいのに、パートナーであるレティシアも一緒なのだから問題が無さそうだと、騎士団の皆は思っていた。
何度も一緒に魔獣を倒した団員もいるため、ギルベルトの魔獣討伐の信頼はとても厚いのだ。
だからこそ、『運命のパートナー』である平民2人の見物会と言っている人物も居たほどである。
しかしその見学は長くは続かなかった。
「ちょっと!虫嫌なんだけど!」
「水が緩いよ、冷たくしてくれない?」
平民2人のあまりの傲慢さには、騎士団皆が驚いた。
確かに一般的に街に居る騎士団達は平民が多いのだろうが、ここに来ている騎士団員達は全員魔法が使用できる。
確かに実力主義の騎士団なので、魔法が使用できる平民も中には居たが、やはり選りすぐりのメンバー達を集めると殆どが貴族となってしまうことは仕方がなかった。
実力主義の騎士団のため貴族と平民の差別はご法度、その皆の前で当たり前のように『運命のパートナー』という肩書をひけらかす『平民のパートナー』達に驚いたのである。
それに比べてギルベルトのパートナーのレティシアは、どの相手にも敬語を使い、お礼は欠かさず、わがままの1つもない。
ギルベルトのパートナーに選ばれただけでも傲慢になる女性もいるだろうに、レティシアにはそのかけらも見えなかった。
その様子に、やはり、運命のパートナーではないから、あの様に大人しいのではないかとの憶測も立つほど。
クリスチャードの能力を知り、ギルベルト達こそが『運命のパートナー』であると聞いていた騎士団長すらも、レティシアの大人しい姿に驚いていた。
ギルベルト程の人物にパートナーに選ばれたのだから、もっと自信に満ち溢れても良いはずなのに、その自信はまるで無いように思えたからである。
そんな時、騎士団長はこんなセリフを聞いてしまった。
「レティ……最近またギルと呼んでくれていないね」
まるで恋する乙女のような言葉が、あのギルベルトから発言されている。
振り向けば、剣の練習では無表情で剣を振り、女性に対しては変わらない笑顔を貼りつけていたギルベルトが、柔らかな笑顔をパートナーに向けていたのだ。
これは、あながち、ギルベルトの我儘でレティシアをパートナーとした説もあり得そうだ。
クリスチャードとギルベルトはとても仲が良いので手助けをした可能性だってありえる。
そう、思っていた。
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