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 魔力が切れて意識が朦朧とする中、ギルベルト様が慌てた様に近くに来る気配がある。


「レティ、レティ!」

「良かった……無事で……」

「魔力不足だね、本当は分けてあげたいけど」

「大丈夫です、大丈夫」


 頭は上手く回らなかったが、魔力譲渡してはいけないと覚えている。

 心配させて申し訳ないな。と思いながら、私は再び意識を失ったのだった。






 目が覚めると学園の保健室に寝かされていると分かった。

 見たことのある天井と匂いに僅かに安心を覚える。


 外が騒がしいと思っていると、2人の生徒が入ってきた。どうやら片方は怪我をして治療を受けに来たらしい。

 ここにはとても優秀な治癒の力を持った治癒師と、出来の良い魔法薬もあると聞くので魔法が使える者でも訪れるのだろう。

 だが今は先生の気配は無い。

 2人は先生を待つことにしたらしい。

 カーテンの向こう側で2人は談笑を始めた。



「そういえば聞いたか、ギルベルト様と平民2人の話」

「ああ!!あの魔獣倒したってやつだろ?やばかったよな、あれ来て街が崩壊した所もあるらしいし」

「だよな、ギルベルト様はもちろんだけど、あの運命のパートナーの2人にも感謝しないとな」



 普通に会話するその内容には、疑問点が2つあった。

 私が参加していない事になっている事、平民2人が活躍したとされている事の2つである。


 あの2人のせいでギルベルト様は怪我をしていたはずなのに、今外はどんな状況となっているのやら。


 想像しただけでも、私は永遠の眠りにつきたくなる。



 音を立てない様に寝返りを打つと、再び堅く目を閉じた。


 やはり、あの2人に『運命のパートナー』なんか渡して田舎にひっそりと住んでしまおう。

 ギルベルト様は活躍されたと評判の様だし、今まで以上に忙しく、私を構う暇などなくなるはずだ。



 ガラガラと扉の開く音がすると、外に居る2人が慌てる声がする。


 シャッと開けられたカーテンの方へ目を向けると、ギルベルト様が立っていた。


「レティ、起きたんだね」

「……おはようございます」

「はぁ、心配した……2日も目を覚さないとは思わなかったよ」

「え?2日!?」


 慌てて飛び起きるとぐわりと視界が揺れて「うっ」と声を漏らしてしまった。

 ギルベルト様が慌てた様子で私のおでこに手を当てて熱を測っている。


「すみません、多分貧血とかで」

「あ、ああ、そうだ、何も食べていなかったんだから貧血にもなる。何か食べようか」



 そう言うなりギルベルト様が私をお姫様抱っこの形で抱き抱え始めた。

 突然の出来事に固まる私は、抵抗をする時間も与えられない。駆け足で部屋に戻っているギルベルト様に、私はようやく抗議の声を上げた。


「な、なんで!?」

「治癒師の治療も要らないだろうから一旦私たちの部屋に戻ろう。食事はそこでいいだろう?」

「や、そうじゃなくて!」


 私は何故お姫様抱っこをする必要があるのかを問いただしたかっただけである。

 確かに食事を取るのであれば保健室の中では好ましい行為ではないのかもしれないが、少し移動するだけである。

 それに死ぬわけでもないのだから急ぐ必要もない。



「下ろしてください」

「何故?婚約者をこの様に運んで何が悪い」

「こんやくしゃ!?」


 最早何を突っ込めば良いのかを考える時間を欲していた。

 私の記憶では2日前、1回目の気絶をした時に「結婚するつもりだ」と言われた記憶はあるのだが、その『思考』から突然の昇進(婚約者)に戸惑いを隠せない。


 この数日間でザヘメンド家に何が起きたのか、誰か急速に教えてはくれないだろうか。

お読みいただきありがとうございます!

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