表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/170

75

 目を開けると、木で出来た天井が目に入った。

 周りを見渡すと山に建っているような小屋のような内観をしている。中には誰も居らず、私1人がベッドに横になっている状態だ。

 中に置いてあるのはタオルなどの備品のみなので、ここは森の休憩所かもしれない。


「……うーん」


 頭を振ると、ギルベルト様が笑ったところで記憶が途絶えていると思い出した。

 あの時気絶をしたらしい。


 陛下の前でも気絶などしなかったのに、何故ここで気絶などしたのか。

 恐らくギルベルト様に迷惑がかかっているに違いない。

 以前クリスチャード殿下に頼まれ作成した魔法薬は持ってきたが込められた魔力は私のものではなく、『パートナー』としての役割は全く果たせていない事だろう。


 それにしても、ここはどこだ。


 ベッドから起き上がり、屈伸をしてみても、特に気持ち悪くはない。体調も悪く無さそうなので小屋のドアに近づいて開けてみた。





 その瞬間聞こえる悲鳴。


 声の大きさからして、そこまで離れていない距離だろう。


 私は、ギルベルト様に何かあったのかと、部屋を飛び出していた。


 近くの崖までたどり着くと、20メートルほど下でギルベルト様と噂のペアが魔獣と戦っている。



 あれは確か教科書に載っていた。

 名前は思い出せないが、鷹の体に獅子の顔。その大きさは3メートルほどと魔獣にしては小さいが、スピードがかなり早いと書いてあった。


 威嚇をするでもなく、ただ様子を伺うような姿は、3人を脅威にも思っていないと思われる。


 恐ろしい魔獣にも関わらず一緒についてきていた騎士達の姿はない。

 20人位は居たはずだがこんな状況で何をしているんだろう。

 よく見るとギルベルト様の左腕に大きく引き裂かれた跡があった。

 顔は歪み、少し息が上がっている。

 2人を庇っているところを見ると、あの2人がいる事で戦いが苦戦しているだろうと判断ができた。


 あの腕を放置しておけば出血で死ぬ恐れもありそうだ。


 放っておく訳にはいかないが、魔獣にちょっかいをかけた所で被害が拡大するだけ。


 バレたら飛んできて私が死ぬ運命がみえる。



 初心者に対してこの展開はあまりにレベルが高くはないか。そんな事を思いながらこの後の展開を必死に考えた。


「ふぅぅ……」



 静かに息を吐き、自分の最小の魔力を測る。

 目標は、ギルベルト様の腕だけ………。


『ヒール』と、癒しの魔法をかけようとした時、頭に、誰かの声がした。



『特別な魔法を教えて差し上げます』

「…………」

『シファー』

「…………シファー…?」



 その瞬間、ギルベルト様の体は淡いオレンジの光に包まれた。

 何が起きたかは分からないが、ギルベルト様自身が一番驚いているようだ。


「……聖女、様?」


 言葉にした時には、頭の声は何も聞こえたくなっていた。

 周りを見渡しても後ろには木が生茂っているのみだ。


 キインという音が聞こえ、まだ戦いが終わっていなかった事に気がついた。慌てて顔を戻すと、ギルベルト様が魔獣に剣で応戦している。


 後ろの2人は腰が抜けて立ち上がらないようで魔法すら唱えていない。


 私は再び集中すると《アップ》と唱える。



 その後すぐ、ギルベルト様によって魔獣は倒された。

 私は魔力が無くなり、その場にへなへなと座り込んだ。




お読みいただきありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ