表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/170

73


『聖女』



彼女は、本当の意味で聖女と呼ばれる前から聖女として名を馳せていた。


民の声を良く聞いてくれる聖女であると。




「今年はたくさんの野菜が取れました」


聖女は、頬を染めて喜んだ。


「ようやく学校に通えるのです」


聖女は、手を握って微笑んだ。


「昨日飼っている猫が死んでしまって」


聖女は、震えながら涙を流した。



彼女は、その人物の感情を同じように感じる事ができる才能があった。


その能力は彼女、エターナル姫にとって、とても使い勝手の良い能力として常日頃から使用していたものである。


本来、誰かを相手をする事が好きでは無い彼女にとって

同じ感情を向ければ分かってくれたと、勘違いをしてくれる民を同情はすれど見下してさえいた。



だが、この能力を使っていれば安泰な生活がついてくる。

そのために彼女は、程々に使い、毎日を過ごしていた。はずであった。


ある日、陛下から告げられた言葉は彼女にとって最悪の事態を招くことになる。




『隣国へ嫁げ』




陛下が言う隣国とは、砂と土と太陽で出来たような乾燥した地域の事であり、作物も上手く育たないと有名な場所である。


そんなところへ送られてしまえば、今までのうのうと過ごしていた毎日が一変してしまう事は誰しもが明白であった。


(なんとかしなければ)


そう考えた姫は、世界の外れにいるという魔王の力を使って、こちらに嫁いでくる隣国の姫との魂の交換をしようと考えたのである。



姫は何とか魔王討伐の理由を作り上げると、自らも聖女としてその戦いに付いて行った。


そして彼女は無事、隣国の姫の体に入り込む事に成功したのだった。




誤算だったのは、帰国後、『エターナル姫』は聖女として祭り上げられ国の栄光として自国に残り、隣国の姫は刺客に殺され帰らぬ人となった事だろう。





身勝手でかわいそうな我が聖女が唯一出来たただ一つの仕事は、中身を本物の聖女となる手助けをした事のみである。





ああ、聖女よ。

かわいそうな聖女よ。


お読みいただきありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ