68
『運命のパートナー』が他にも居るかもしれないこの状況下で、王族との間に何かしらの問題を起こすなど……大問題だ。
「殿下は、私とギルベルト様のパートナーについて、どうお考えなのですか」
「ん?どういう意図で聞いている」
この目の前にいる最初の印象よりはましな殿下は私とギルベルト様のパートナー関係についてどの様に考えているのか。
実はずっと気になっていたのだ。
「そのままの意味です。私たちが『運命のパートナー』である事に対してどの様にお考えなのですか」
「ふん、そうだな。ではまず貴方には謝ろう。すまなかった」
「え?」
急に『貴方』と呼ばれて驚愕させられたにも関わらず謝られるなど天と地がひっくり返るのではないかと、ついソファに手をついた。
まだひっくり返らないようなのでゆっくりと手を戻すと、今の言葉が本当だったかを思い返してみた。
「なんだその顔は、私が謝る事がそんなに驚く事か」
「ええ、もちろんです」
私のその言葉で殿下は苦虫を噛み潰したような顔になってしまった。
私も正直失礼な事を言った自覚はある。
「お前は、少し下手にでたらすぐ本性が出るのだな」
「申し訳ありません、性です」
「本当、よく回る口だ」
「お褒めいただき嬉しく思います」
「褒めてないわ」
殿下は始めに座っていたように、背もたれに背を預け、肘を椅子の肘掛に置いて気怠そうにした。
最初とは違いバカにした態度ではない、という事だけがこの人が私の事を少し認めたのかもしれないと思わせる。
少し、謝った内容を説明してくださった。
彼は、私がギルベルト様頼りのナヨナヨした女だと思っていたらしい。『運命のパートナー』に浮かれ、いつまで経っても魔力向上の練習もしないようなロクでなしの人間なのだと。
ギルベルト様が常時訂正はしていた様だが、盲目になったパートナーの戯言だとまともに聞かなかったようだ。
確かに今までの運命のパートナーは相手を溺愛していたと記述されているからその思考回路はあってもおかしくはない。
けれど疑問なのは、何故素直に『運命のパートナー』である事は認めているのかという事だ。
「僕の能力の1つに魔力の色を見る事ができる物がある。お前らは完全に同色な上に酷く毒々しい色をしているのだから、パートナーである事は勿論、普通のパートナーでない事位容易に分かったわ」
「色?」
「ああ、王族に稀に出る特殊能力のうちの1つだ」
「え、ええ……」
もしかして、とんでもない秘密を暴露されていないだろうか。殿下に特殊な能力があるという事実も初めて聞いたのに。
「では、それを公表して頂いて」
「無理に決まっているだろう。これは悪用ができる能力だから知っている人間はごく僅かだ」
や、やはり。
ギルベルト様も知っているかもしれないが、何故私にさらっと言ったのだろうか。
もし私が他に漏らすという思考にはならないのか。
その疑問が彼に伝わったのか再び眉が挟められた。
「お前は案外律儀だと聞いている、ここまで言って他にバラすような行為は確実にしないと思っている」
どうやら思うよりも信用されているようだ。少し、怖いが。
お読みいただきありがとうございます!!




