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「な、なんなんだお前は!そんな事言うなんて卑怯だぞ!」


 先ほどまではふんぞり返っていたにも関わらず、急に立ち上がって私に指を刺しながら慌てた様子で大声を出すなんて。

 本当に貴方は殿下なのでしょうか、と聞いても今なら許される気がする。


「卑怯と言われても、事実を述べたまでではありませんか」

「そっ……!」


 何かを言いかけて黙り込んだ殿下は、ぱくぱくと口を動かした後にストンと席に腰を落とした。


 少し深妙そうな顔をしながら座り直すと、私の事を真っ直ぐに見つめる。

 身構えていると、殿下はゆっくり口を開いた。


「あの作り方は、普通に考えたのか」

「え?」

「あの薬の作成方法は、どうやって考えたんだ」


 強い口調で責め立ててきた先ほどとは違い、私の様子を伺いながら話しかけてくれている。

 この様子を見ると、この方は殿下という立場で話すこともできる人なのだと、つい感心してしまった。

 しかし、私が答えれる回答は1つしかない。


「…普通に考えましたが」

「そうか……」


 殿下は口元に指を当てながら、何かを考え始めたようだ。

 何をそんな考えることがあるんだろう。

 まさか今回作った作成方法に何か問題があるというのか。

 僅かな嫌な予感に、頼むから何もなくあってほしいと祈った。


「恐らくお前は、今回の王命を嘘の発言だと思っているだろうが、そんな事はない。この薬には、王族の中でもごく僅かな人間にしか受け継がれない作成方法が何点か抜粋されて使用されている可能性が高いと判断された。その為に、この薬を作った人物を連れてくるように言われている」


 スラスラと述べられた内容は、とてもじゃないが聞き流すことができる内容は1ミリも含まれていなかった。

 どこの部分を切り取っても私1人きりでは収まりきらない情報量が殿下の口から流れてきたのだ。

 このまま気を失ってしまえたらどんなに楽だろうと思う。


「私も、王族にそのような薬の作成方法が受け継がれているとは知らなかった。今回、前受け取った薬を持ち帰ったことで初めて聞いたのだ」

「なるほど……」


 殿下では教えてもらえないのか、もしくは何かしらの功績がなれば教えてもらえないのか、定かではなかったが、確かにその方法を私が知っているという事実は通常であればあり得ない事だ。


「ギルは魔剣士として凄まじい功績を残しているから、知っていてもおかしくはないと考えたんだが、どうやら本当にお前が作っているようだな」

「ええ、今なら変更したくもありますが」

「聞いてしまった以上訂正はさせない」


 真紅の瞳は私の目から視線を外さず、私はその視線を晒すことができなかった。


 ただ疑われている訳ではなさそうだが、王命という事は、下手をしたら陛下の前に連れ出されてしまう可能性だってあると考えると胃がキリキリと締め付けてくる。


 一体王族に伝わっている作成方法が何かは知らないが、無意識にその方法を使っていたとなると、また聖女関係ではないかと思えてくる。



 心の中で、私の好きな魔法薬にまで手を出していたなんて。という悪態をつきながら、この後自分はどうなってしまうのかについて必死に考えた。




お読みいただきありがとうございます!

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