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今日少し短めです…!
ギルドへと向かうと1人のエルフが話しかけてきた。
「昨日聖女様と一緒にいた奴か。ちょっと来なさい」
そのエルフは他のエルフに比べると少し歳が上の様に感じたが、彼らの年齢は見た目と同等のとは限らない。
けれどギルドにいたエルフ全員の視線から彼がこの中で最も偉いのだろうと言う事だけは分かった。
客間のような場所に通されると、紫色をした飲み物を出される。どうやらフレーバーティらしい。
出された飲み物の中身を考えている間にエルフは昨日の人物だが、と口を開きはじめた。
「聖女様と言ったが、彼女が聖女様その者だとは思っていない。恐らく生まれ変わりなのだろう。彼女の名前はレティシアというらしいな」
そこまで言うと一冊の本を取り出して差し出してきた。
「自己紹介もまだなのに話始めて悪かったね。私の名前はレントリュースと言う。ここのギルドマスターをしている。もしかしてここを訪ねたのは昨日のフローナに何かあったからじゃないかな」
「ええ、彼女が突然倒れまして」
「やはりそうか。彼女はギルドの人間だから連れてきてくれて構わないよ」
差し出された本には全く触れないで話始めた彼は、わざとなのか視線を本に向けながら『本当は今日休みだったけど、聖女様達には迷惑をかける訳には』などと呟いている。
しかし、この謎の本について解明しないと気になって帰る事など出来そうにない。
「あの、」
「ああ、この本の事だね。すまないね、説明が抜けてしまっていた。これはいつも彼女のパートナーに渡している、本だ。」
「……何故、パートナーだと?」
「聖女様から僅かに貴殿の魔力を感じた。人間のパートナー同士は魔力譲渡ができるだろう、それをするとあのような魔力反応になる」
「なるほど……」
思い返してみると、フローナもこの魔力が見えていたからこそ、複雑な面持ちでこちらを見ていたのかもしれない。
そう思っていたらレントリュースは立ち上がり、何かの呪文が始まった。
手にしていた本が浮き上がり、風によってぱらぱらと勝手にページがめくられていく。
「な……」
本はあるページで止まると、自分の前にゆっくりと降りてきた。そして、ギルベルトはその本を本当の意味で受け取ったのだった。
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