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アスティア様によると、教科書などにも記載があるような、運命のパートナーが魔法を使用した際に現れる『黄金のスター』を自分の目で見たという。
黄金のスターとは三角形を2つ組み合わせた様な星、六芒星の周りに三重の円が描かれている物が一般的に知られる『黄金のスター』である。
しかし、それは運命のパートナーであっても特別な魔法を使用した際にのみ発動されると言われている魔法陣だ。しかも、どの魔法を使用した時に発動するのかについては解明されていなかったはず。
もし、本当にその魔法陣を見たのだとすれば歴史的瞬間だったと言ってもいい。
「それで、アスティア様は運命のパートナーは別に存在すると思ったのですね」
「ええ、その通りですわ」
果たして、その魔法陣を見た後に行う行動が誘拐で合っていたのかについてはさて置き。
もし、その事実が本物であるならば、私とギルベルト様の関係は一体何なのかという事になる。
けれど私は、『ギルベルト様とパートナー』という件を否定する事ができない。面倒事は基本的に避けて通りたい、この私が、である。
「その、1年生2人の名前を教えてもらえませんか」
結局は、より面倒になりそうな予感がして、早めに手を打つ事が吉だと私は判断する事にしたのだった。
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「アスティア様はその後に、ギルベルト様と結婚するつもりなのかと聞いてこられたので、『ギルベルト様に聞いてください』と返しておきました」
「ああ、まぁ、レティシアにしては最善だね……」
現在、私とギルベルト様は練習場に来ていた。
どうやらその『運命のパートナー』との噂の1年生2人がいるとの情報が入ったため、一応見ておこうという話になったのだった。
ギルベルト様もアスティア様から聞いていたらしく、ただ、そこまで頻繁に『黄金のスター』が出るのは考えられないという事で、今回は嘘を確かめに来たようだ。
「私がもっと魔力があれば何か違ったかもしれないですね」
「けれど魔力に引きずられて自分の意思が無くなっていたかもしれない。だから少なくて良かったよ」
ギルベルト様はそう言って笑った。
少なくて褒められるなんて別に嬉しくはない。
だが確かに魔力が高く、勝手に自分の感情を支配されていたかもしれないと思うとギルベルト様の言葉も間違ってはいないのだろう。私は無理やり納得させる。
しかし、人の感情を操る魔術など禁忌の魔法以外に聞いた事がなく、もしこれが禁忌の魔法だとすれば生まれた時から施されていたなんて普通考えられない。
だから、この強力な呪いこそが運命のパートナーの力なのだとしたら少し納得がいっていた。
そんな時に普通のパートナーが運命のパートナー程の力を発揮出来るのであれば最近考えていた内容すら変わってくる。
それこそ本物の『運命の出会い』であり、神聖な人物であって欲しい。
そんな事を考えながら練習場に足を踏み入れた。
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