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ギルベルト様の魔法によって学園のある街の入り口まですぐに到着した。
街に入る際には何かしらの身分証を見せなければならない。
しかし私は連れ出された身であるのでどうしたら良いのかと首を傾げる。すると、ギルベルト様は私が疑問に思っている事が分かったようだ。
「レティシアを連れ戻すと言って出たから大丈夫だよ」
「………なるほど」
呼び方が戻っているな、などと考えた自分を責めたい。
別にこちらが普通である。
ギルベルト様の言う通り、何事もなく通過することが出来たが、なぜ学園までそのまま転移しなかったのだろう。
「まぁ、色々と規則があるんだよ」
「そうなんですか」
「破ると違反金などが発生するし、最悪指名手配されてしまうんだ」
「なんでバレるんですか」
「規則を守らないと痕が残るからね。特に門とかには特殊な魔法が使われているから乗り越えると道筋を辿ることができる」
「…では以前魔法を実験した場所は…?」
「ああ、あれはね…また違うんだ」
どんな法則なのかまるで理解できない。
しかし、指定箇所への転移と指定しないでの転移(その後その場所を指定しても指定しない転移と同じ法則になるらしい)は、似て非になるものらしい。
へぇそうですか、と聞いているうちに学園の入り口に着いてしまった。
そこには1人、アスティア様が立っていた。
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「申し訳ございませんでした」
彼女がそう口にしたのは私が隣町から帰宅してから数日後の出来事だ。
「何に対しての謝罪なんでしょう」
「私には分かりかねますわ、最早」
「……は?」
彼女、アスティア様は以前と変わらないような毅然とした態度で私から視線を晒そうとしない。
今この場所は私の癒しの調合室であり、その調合中に唐突にドアをノックして入ってきた彼女には、そこに対しての憤りの方が強いのだが、謝ってきた内容はそれではないのだろう。
私は調合を途中で中断して、簡易的な机と椅子を取り出してきて座るよう促す。少し嫌そうな顔をしたものの、アスティア様は座ることにしたらしい。
「それで、この間の誘拐事件の事でしたら私の中では終わっているので謝罪はけっこうですが」
「いいえ、私の中では終わっておりませんし、終わらせたくて参りました。謝罪を受け入れてくださいますね」
何故そんなにも高圧的なんだろうか。
誘拐されて、誘拐犯にこんな脅迫を受けるなんて経験をする人は世界にいるだろうか。
私は頭を悩ませると、1つだけ質問をする事にした。
「はぁ、では、貴方に誘拐を仄かした人物は誰なのでしょうか」
すると、アスティア様は大きく目を見開いてから暫しの沈黙の後に口を開く。
「ギルベルト様と同じ質問をなさるのですね」
「そうでしたか」
普通に考えて学園の中で容易に誘拐なんて起きては困るものだ。
働いている先生方も戦術には割と長けていると聞くし、普通に門の外まで運ぶ事が容易でない事もこの間知った。
そして大変申し訳ないが、お嬢様であるアスティア様に誘拐という考えを実行する程の頭があるとは思わなかった。
「本当に運命のパートナーなんですの?」
「どういう意味で聞いてますか」
「この間見ましたの。どこの物語でも描かれておりますでしょう。運命のパートナー達が魔法を合わせる時発動する、黄金のスターを。だから貴方方が言う運命のパートナーはギルベルト様が一時凌ぎの為にお金を払って雇ったと判断したのですわ」
「それは…どこで見たのですか」
「たまたま練習場に入った時です、今年新しく入った1年生の2人が練習を行っておりましたの」
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