48
下書きの時、何故か『運命のパートナー』を『安定のパートナー』と書いていて、レティ達の気持ちが現れたのかなと思いました。
笑った。
「別に落ち着いてなんかいませんよ」
私はそう答えてから再び外の風景に目を移した。
今日は雲ひとつない青空、先程まで木に小鳥が止まり楽しそうに鳴いていたのに、その子たちは既に居なくなってしまった。
「そうでしょうか。今までの『運命のパートナー』たちは皆混乱して取り乱しておりましたよ」
「今までのパートナー達を知っているんですか!」
「ええだって私は魔王に……」
「魔王?」
そこまで言うとフラワージェさんは何も話さなくなった。
「え!?ちょ、ちょっと、フラワージェさん!」
外から視線を中に戻すと、そこには先程と変わらないフローナさんがただ横になっている。
先程からエルフという存在に散々振り回されているのだけど、エルフにとっては通常運転なのだろうか。
何も話さなくなった彼女からは安定した呼吸音だけが聞こえてきた。
これは完全に居なくなってしまったのだろう。
さらなる、謎だけを残して……。
魔王。
それは世界の最悪と呼ばれた存在。
その者が世界の魔物を使役し、人間達を襲い、争いが絶えない世界がそこに存在していたという。
それが、図書館や教科者で見かけていた魔王。
しかし、最近私がその文字を見たのは、とある日記の中である。そこから感じられる魔王の姿は、あの短文だけ見ても、存在しなければいけなかったようだった。使役はしていたのかもしれないが、それによって人間を襲わないようにしていた可能性が高いように感じられるほどに。
聖女達と旅をしたエルフから魔王の言葉が出るなんて、もう、万々歳だ……。
「ただいま」
「あ、おかえりなさいギルベルト様」
「……どうした?何かあったの?」
「……ええ、ありました」
私はその状況や言葉などを事細かく話させてもらった。
フラワージェと名乗るエルフがフローナの体を借りて突然話し始めた事、聖女と勇者と共に旅をしていたらしいこと。
顔色を白黒させていたギルベルト様は、最後の魔王の言葉に頭を抱えたようだった。
「やはり、関係がありそうだな……それに、フラワージェ殿の意識が途絶えたことも、誰かが関与してそうだ」
「はぁー!確かにそうですね。なんか、来るべくして来たようで、納得いきません」
「同感だよ……」
まるで思い通り事が運んでいるみたいだ。
しかし、どこから?
今回はアスティア様のせいでこの街まで運ばれて来た。アスティア様が誰かからの指示で動いたとでもいうのか。
いいや、それは違うだろう。
もしくは誰かが協力をしたのか。
では、それは誰が。
「だめだ、頭がパンクする」
「そう言えば、フローナさんというエルフはここのギルド役員らしいんだ。今日は休みだったが連れてきてくれて構わないと」
「そうですか。じゃあ仕方ないですから担いでいきましょう」
「……私がね」
「ええ、ギルベルト様が」
ギルベルト様はため息をつくとフローナさんを担ぎ上げ、扉を開けようとしている。
「少し休まないのですか」
「フローナさんが起きる前に返してくるよ」
「なるほど、ありがとうございます」
片手を上げて去っていく彼を見守ると、ふと疑問に思う事ができた。
私と聖女様が似ていると言うことは、今までの運命のパートナーとも似ていたりするのだろうか。
血筋の可能性もあると言っていたので、歴代の運命のパートナーとの関係性も確かめてみても良いかもしれない。
私はこの街にある図書館に向かう事にした。
もう5月ですね、早いものです。
お読みいただきありがとうございます!




