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そう問うと、彼女はキョトンとした顔をした後にケラケラと笑い始めた。
「まさか私を試しているのですか?どこをどう見ても聖女様ではありませんか。外見も、魔力の波動も全て」
「………え、ええ?」
最早私がおかしいのではないかと思うほど、彼女の発言に嘘があるようには見えなかった。
私は頭を捻って昔のことを思い出すも、やはり私は何千年と生きた記憶は全くなく、年齢通りの生活しか思い出すことはできない。チラリとギルベルト様を見てみると、彼も同じように昔の記憶を巡っているように見えた。
しかし、今回のように彼ではなく私が身分が高いように振る舞われる事は初めてであり、とても居心地が悪かった。
私はやはり平民で雑な扱いの方が性に合っていると改めて感じる。
「聖女様?」
「あーあの、私本当に記憶が無くて。貴方の事を聞かせて頂いてもいいでしょうか」
私はとりあえず彼女の話を聞こうという結論に達した。
そもそも今無い記憶を蘇らせることは不可能だ。
正直『聖女』などという不吉な単語は聞きたくないとも思っている。
「記憶が……そうだったのですね、かしこまりました。私が知る、貴方様についてお話しいたしましょう」
しかし、彼女はギルベルト様を邪魔だという目で見るといきなり握り拳をだぁんっ!と机に叩きつけた。
「うおあ!!」
「わっ!」
「部外者は出て行くのが筋かと」
「……………」
「……………」
きっとギルベルト様と同じ事を考えているはずだ。いや初めからなんとなく気がついてはいた、このエルフ絶対面倒な人物だ。
ギルベルト様は動揺しながらも私に視線を移すと、コテリと小首を傾げる。私は勢いよく首を横に振った。
もしここで念が通じるのであれば、『どっか行ったら許さない』と言っていた事だろう。
「す、すまないが、私はレ…彼女のパートナーでね」
「パートナー?お前がか」
「それに彼女は少し面倒な事に巻き込まれているから、離れたくないんだ」
「は?パートナーでありながら聖女様を面倒ごとに巻き込むとは。貴様舐めているのか」
「……い、いや」
おお。ギルベルト様がかなり押されている状態はアナリア様の時以来だ。そして他人からのこの様な上からの物言いに慣れていないのだろう。
そもそもこのエルフ何者なんだろうか。
エルフは基本的に人間の階級などは通じない。人間に興味がない者が多く、殆どの人間よりも多くの魔力を保持する為に、人間が畏って物事が進む事が多い事は知っていたが。
だが、ここまで高圧的とは知らなかった。
「……はぁ、ありえん。聖女様、是非私と一緒にお帰りになった方が安心でございます」
「…………い、いやあの。申し訳ないのですが、記憶が無いので急に色々言われても分かりません。ギルベルト様も同行してよいでしょうか」
私が思わずと同席についての件で口を挟むと、そもそも大きな目を更に大きく見開き、少し血走った目をしながらギルベルト様に迫った。
ギルベルト様はたじろいで最早怯えている様に見えた。
まぁ、この意味わからない状況ならば怯える事もよく分かる。
「……貴様、聖女様から慕われてさぞかしいい身分なのだろうな」
「…は?慕われる?何が」
「何『様』をつけられて名前を呼ばれていると言っているんだ、貴様ぁ!」
「ちょ、ちょっと」
ああ、神様。
このエルフを一回黙らせてはくれないでしょうか。
というか、こいつ一体何歳なんだよ!
お読みいただきありがとうございます!
ゴールデンウィークの投稿をどうしようか悩んでおります。。。




