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今回少し短いです!
そして何より恐ろしいことは現在、魔王の存在は絶対的な悪であったとして記録が残っている事だろう。
しかも世界にいる魔族たちを操り、人間世界を服従させようと企てた為に勇者と聖女によって打ち滅ぼされた。
というような内容で、だ。
そして、世界に平和をもたらした勇者様と聖女様を崇め奉っている世界で私達は生きている。
この文章が合っているのだとすれば、
魔王は『存在しなければならない人物』であったはずだ。
ゾッとする。
今現在魔族たちが人間を襲う事実は、実は魔王が居ないせいであれば、私達は何千年も前に最大の過ちを犯した事となる。
そしてそれは。
この本の彼女の私欲の為に殺され気がしてならない。
ふう、とため息をついて本を閉じると、私はベッドの上に寝転んだ。
毎回この本を読むと、あまりの重さに頭が痛くなる。
しかもその本の、そこから先の文章は紙がくっついてしまっていて見ることが出来ない。
どうやら魔力がかかっているらしい。
私は、一体何者だ。
何故こんな本を残した。
そして、一体何をしたのか。
学校が始まっても定期的に図書館に通い、この本に近い物がないかを探している。
しかし、成果は今ひとつ。
司書の方々にも言ってあるが、あれから一回も見ていないという。
「はぁ………」
___コンコン
「レティシア、今大丈夫か?」
「ギルベルト様、かまいません」
私は自分のベッドから飛び起きると、扉に手をかけて中央の部屋へ向かった。
ギルベルト様はすでにソファに座って待っている。
簡単に紅茶を入れるとギルベルト様は驚いたような顔で私を見てきた。
「紅茶、淹れ方上手くなったね」
「本当ですか、良かった」
「……じゃあ運命のパートナーについて調べた事を伝えるよ」
紅茶が上手く淹れれるようになる事はとても嬉しい事だ。何故なら貴族相手にも紅茶を淹れることが出来れば魔法薬での商売にも役立ちそうだと思っているから。
まぁ、そんな事はさておき、ギルベルト様が調べてくれていた件について真剣に聞くとしよう。
「今までの運命のパートナー達について歴史書などを調べると、素晴らしい業績を残してきたとしてかなりの褒め称えられ方をしている。しかし、彼らの周りにいた人物達が書いた彼らに対しての意見は少し違っていたらしい」
「と、言うと?」
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