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30話を超えましたが、そろそろ運命のパートナーについて詳しく触れていきます。
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◯月◯日
私は本を読んでいた。
禁忌の魔法陣が描かれている本だ。
私にはその魔法陣を発動させるほどの力はない。
あるとすれば世界の果てにいるという魔王くらいなものだろう。
魔王と言っても悪さなどはする事なく、世界に蔓延る魔族たちの統一化を主に行なっている、正真正銘の魔の王である。
その魔王を倒してしまえば、この世界には再び闇が訪れる事は分かっていた。
しかし、彼を倒さなければ私は、
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その内容は、とある本に書かれていた。
それは、私の学校に通う前に与えられた3ヶ月の猶予期間に通った図書館で見つけた本だった。
流石に1ヶ月も同じ時間に通っていると司書の人達も私の顔を覚えたらしく、何人かからは声もかけてもらえるようになったある日。ふと目に止まった本を手に取った時に1人の司書が少し大きな声で叫んだ。
「またそれだ!」
その声に驚いて本を落としてしまい、丁度真ん中のページが開いてしまった。慌てて拾おうとすると司書の人がその本をひょいと拾い、ため息をつきながらごめんねと謝ってくる。
「つい大きな声を出してしまった、ごめんね。司書長には内緒にして。それにしてもまたこの本だ。たまに紛れ込んでくるんだよね、何も書かれてない本とか誰も見ないのにさ!」
そう言いながら本を手にし、忙しい、忙しいとすぐに去っていってしまった。
『何も書かれていない本』?
私には開いたページに文字がハッキリと見えていた事がさっきの記憶に残っている。じゃあ私が見たあれは一体何だったのか。
書いてある内容を読み解けるほどの時間は全く無かったが、確かに読める文字で書いてあった事は確かだった。
私は慌てて司書を追いかけるとその本を貸してほしいと提案すると彼は、驚いた顔で「あげるよ」と言ってきた。
「え、でもこれは」
「毎回捨ててるんだ。メモ帳にでも使ってよ」
そう言いながら私に手渡すと、思い出したかのように新しく入荷した貴族名簿もついでに手渡してくれた。
その時の本ががこの『日記帳』である。
何故私にだけ読むことが出来るのか分からなかったが、とりあえず読み進めてみると、女の子の日記だった。
『今日は天気が良い』だの『おやつが美味しかった』だの『かっこいい人を見かけた』だの。
どうでも良い内容に、もう読む事を止めようかと考えた時に、この本は一体いつ書かれた本だろうと考えた。
長く読んでいて忘れていたが、これは明らかに古文で書かれた文章。どう考えても4000年近くは前だ。その時代の食事風景を授業で習ったが『平民』はおやつという概念が無かったはずだ。
貴族に近しい文化は、勇者様と聖女様が魔王を倒される以前より確立されていたと記憶している。
そのシステムは現在よりもより厳しく、身内婚が当たり前だったと書かれていた。
なによりも血が重要。綺麗な血でなければ貴族ではなく、貴族以外の血は汚いとされていた時代。
平民なんかは、奴隷の様にこき使われ、仕事も農業がほとんど。文字の存在すら知らずに生涯を終える人だっていたのではないかと思われる。
そんな中彼女は、文字が書ける知識を持ち、その文字を書き写す道具を持ち、おやつを食べる事ができた人物であり、日中はわりと優雅に過ごせる環境にいたらしい。
貴族であることは間違いなく、割と裕福な家庭だったと簡単に予想がつく。
そして、ようやく最後のページまであと10ページほどと迫った時に先程思い返した文書が書かれていたという訳だ。
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