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めちゃくちゃ増えている魔力に顔が引きつる朝。
本日から学校に通います。
「本日からこの学園に通う事となったレティシアさんだ」
「レティシアです、よろしくお願いします」
ギルベルト様とは流石に同じクラスにはなれなかった。
そもそも1番レベルの低いこのクラスでさえ私の魔力値はカスみたいなもんである。
先生からの紹介に、全員からの冷ややかな目が突き刺さる。それもそうだ、詳しい事情はまだ伝わらないとは言え、ギルベルト様と共に学園に向かった姿は何人にも目撃されているし、私がかの有名な学園から来たことは把握されている。
1番後ろの席に座ると隣の女子生徒がチッと舌打ちする音が聞こえてきて萎えた。
貴族の娘さんが舌打ちをするなんて、なんて行儀が悪いのか。せめて優雅に嫌ってもらいたいものだ。
さて、お昼の休憩時間までは恙無く授業が終わった。そして私を天才だと思った。この3ヶ月の勉強内容が全部頭に入っているなんて流石私。褒め称えたい。などと考えているとクラスに来客があった。
「ここに、平民の方がいらっしゃると聞いたのだけれども」
金髪の髪を縦ロールにし、ワンピース型の制服を何故かドレス風にアレンジした、まさにお嬢様を絵に描いたような人物が入り口に立っている。
これは確実に面倒事になると私は机に突っ伏して寝たフリをしようとしたがクラスの生徒達がそれを許さない。
私は叩き起こさられ、彼女の目の前に押し出されてしまった。
「はぁ、私の事でしょうか」
「へぇ?貴方が」
お嬢様は扇を口元に当てながら私の周りを一周した。
じろじろとした視線を全身に浴びながら私はため息が出ないよう必死に努める。
入り口には他5人位のお嬢様方が立ってらっしゃる。誰もが皆、私を蔑むような目で見ながら優雅に笑っていた。
「貴方、ギルベルト様のパートナーだと言い張っているそうじゃない」
「……言い張ってはいません」
「口答えなさらないで」
否定の言葉はピシャッと止められてしまった。
彼女の言葉にクラスの生徒たち全員の目がさらに冷ややかな物に変わった事が分かる。私がギルベルト様のパートナーとしてここに入った事が明らかとなったからだろう。
いつかバレてしまったとはいえ、早すぎる。
せめて、少しくらい誰かと言葉を交わしてからバレたかったものだ。
「ねぇ貴方、身の程を弁えるたらどうなの?」
「……はぁ」
「ギルベルト様のパートナーとして相応しいとでもお思い?わたくし達の事を馬鹿にしてらっしゃるのかしら」
「……はぁ」
「ちょっと!何かしら!そのやる気のない言葉は!」
勘弁してほしい。
何を言ったって私を吊し上げにしたい事は明らかであるというのに。
私はあらかじめ用意してあった定型文を口にしてみる。
「全て、ギルベルト様に聞いていただけませんか」
「はぁ?あんな高貴なお方にこんなお話しできる訳ないでしょう。頭がおかしいのではなくて?」
頭がおかしいのはそちらだ。
「そもそも、この様に平民の私がここに居る意味を考えてください。私以外の誰かが何かしら動いた以外に方法があると思うのですか」
普通はあり得ない。平民で、特に目立った事をしてこなかった人物がいきなりグラント学園に入れる訳もない。見学すら行えないだろう。
一体どんな裏技を使ったのか、誰もが気になるはずだ。
どんな協力者を得たのだろうと。
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