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ギルベルト視点です
一言で言えば、充足した気分だった。
レティシアが魔法を発動した瞬間、魔力が体の足りない部分に染み渡り、初めて自分が完成したような感覚を覚えた。
まだ彼女の魔力が足りないため我儘は言えないだろうが、これは一度彼女の魔力で全身を沈めてもらわねば気が治らない。
彼女が作成した魔法薬でも多少は感じたが、やはり直接魔力を体に流し込まれた瞬間、比べ物にならないほどの満足感が体を支配した。
学園長がいて本当に良かったと思う。
あの瞬間引き寄せてレティシア全部を奪ってしまいたい衝動が駆け抜けていた。もう何度もその衝動は感じていたが、あそこまでレティシアを物にしたいと支配されそうになった事は初めてである。
あの後口づけを拒否された流れを見るに、レティシアは口にキスをさせてはくれなそうだ。最も早く魔力を流す為には口同士が最適であるため、彼女が気を失っている間にだけ施することを決めた。
早く、早く、彼女の魔力がほしい。もっとたくさん。
彼女からの…。
「…………」
結婚はしたくないようだ。
学園長からの問いに即座に答えていたあの反応を見るに、結婚したいなどと1ミリも考えていないのだろう。
自分の考えであれば、普通パートナーとは結婚か何らかの理由で結婚が難しい場合第二夫人のような形で共に暮らす流れが一般的である。
だが、今の彼女に万が一でも『第二夫人』を提案したものなら即座にパートナー解消を言い渡されてしまいそうだ。まだ、契約上はパートナーではないのだから、相手を殺す必要もない。
婚約者には、パートナーが異性だった場合は婚約を解消する旨を伝えてあるため、平民であろうがなんだろうが解消したいと思っている。
しかし現状、レティシアとのパートナーすら認めたくなさそうな父が今の貴族の女との婚約を解消許すとは思えない。
また母に助けを求めなければ問題を解決できないだろう見解につい、ため息が漏れていた。
ベッドに横になるレティシアを見ると、魔力の枯渇を示すように僅かに青白くなった顔を辛そうに歪めながら眠りについている。
彼女の髪をすくと、少しだけ身動ぎ手に頬を寄せてきた。
その行動に自身の心が揺さぶられる。
彼女はまだとても遠い存在だ。
パートナーではない女の方がまだ近い。
何故、君なんだろうか。
「私を早く好きになってくれ」
この本能の名前を自分は知らない。
ただ早く好きになってほしい。
そして、早くこの欲望を解消させて。
それから。
それから……また彼女達と同じように記憶を消すのだろうか。
その思考にギルベルトは目を細めた。
分からない。その後の想像がまるでできない。
しかし、それが大分先の事だという事は分かっている。
まとまらない考えを放棄してベッドの端に手をつく。
ギルベルトはそのまま身を眺めると、眠りの中にいるレティシアへ深く口づけを行うのだった。
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