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 学園長様に会いに行くための廊下はとても神聖な空気が漂っていた。ここだけ常に空気が浄化されているのでは無いかと思われるほど清く、最早何も空気がないかもしれないと思わせるほどチリ1つ舞っていない空間。

 そして、とても大きな扉が目の前にそびえ立った。


「………仰々しい」

「まるで神殿のようだとは思うよ」


 私の呟きにギルベルト様が答えてくれた事で私は慌てて口を塞いだ。これほどまで大きな扉を見た事が無かったためにそう呟いたのだが悪口のように聞こえたかもしれない。

 私は深呼吸をするとギルベルト様を見て頷く。

 私を待っていてくれたギルベルト様が扉をノックすると中からは優しい声で返事があった。


「やぁ、待っていたよ」


 大きく広げられたその腕からは私を警戒している雰囲気はまるで無かった。

 逆にそう、なんだか……


「運命のパートナー!!!その結成を目の前で見る事ができるなんて!!なんて素晴らしいんだ!」

「…………」

「…………」


 なんだか熱量が凄まじい。


「学園長。初めからそうではレティシアに嫌われてしまいますよ」

「それはだめだ!!!申し訳ない、レティシアくん。つい興奮してしまったよ。さ、そこの椅子に腰掛けて」

「は、はぁ……」


 部屋の中は本棚が壁一面を覆っているようだった。窓が設置されている場所だけが本棚ではないほど、本に埋め尽くされた部屋。恐らく高い場所でも魔法で取る事ができるのだろう。この圧倒される環境に身を置けるなんて正直とても感心する。


 指定された椅子へと腰掛けると学園長様が口を開いた。


「はぁ……運命のパートナーが目の前にいるなんて、なんて素晴らしいのだろうか。何冊も本では読んではきたが、まさか現実でしかも自分の目で見る事が出来るなんて、ここまで学園長になって良かったと思った時はないよ。本でなんども繰り返し読んだあの一文『100%の相性など、奇跡に近い。だからそこ、この世に1人だけである。』ふははは…なんと目の前にその2人がいるなんてこれも奇跡に近いに違いない!いやまだ正式にパートナーであると認定書を出していないからまだ一応不確定だけれどね。さてお二人は鑑定もしていないのに、どうしてお互いをパートナーだと思ったのかな」

「…………はっ」


 よくここまで口が回るものだと感心していたら、まさかの質問をされていた。内容によって彼の機嫌を損ねてしまうかと思うと少し慌ててしまう。


「私は、近くで出会った瞬間に運命の相手だと分かりましたよ、レティシアはどうか知りませんが」

「……そう感じなかったらここには居りません」


 ギルベルト様のせいでかなり不機嫌そうな発言になってしまった事について反省するべきかもしれないが、今の回答を得た学園長が上機嫌でさらに口を動かし始めた。多分多少なりともお酒が入っているに違いない。


「それで、2人は結婚するのかな?」

「……それは」

「そこまでは考えておりません」


 ぺらぺらと話す最後の疑問に、私は反射的に答えていた。

 結婚なぞ1ミリも考えていない。そもそもギルベルト様には婚約者がいたはずだ。アマチュア侍女達がそう話していた。あんな素敵な婚約者がいるのに、その妨げになるとかそんな会話だ。


 せめて、どこをどう考えて私が妨げとなるのかを私に説明してから邪険に扱えと思ったが、パートナーができた場合の何かしらの契約があるのかもしれない。そう思って何も聞かずに放置していた。

 私は決して結婚したいとは思っていない。

 パートナーですら気が重いというのに結婚、まさか。である。




お読みいただきありがとうございます!

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