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家に着くと一緒に付いてきたはずの侍女はいなくなっており、アナリアが管轄する侍女達に案内をされた。よく家の中を見ればアナリアが管轄している侍女達しか残っていない。
昔は、父と母の侍女が別れている事が当たり前だと思っていたが普通はそんな事ないらしい。
ただ、それを母に言った時の顔は今でも覚えている。
『何故かを理解した時、貴方にここを継がせると決めるわ。
まぁ、ただの貴族になりたいのなら理解しなくても構わないけれど』
その言葉とともに向けられた表情の奥には恐ろしい思考があるような気がして初めて母に恐怖を感じた日だ。
「ふふ、待っていたわよギルベルト。さぁパートナーを紹介して頂戴」
「母上、そんなに急がなくてもレティシアは逃げませんよ」
「レティシア!可愛い名前だわ、あら、貴方がそうかしら?」
そう言うとアナリアはソファからすくっと立ち上がりずんずんと近づいてきた。レティシアは挨拶をしようとスカートの裾を摘もうとしている姿で固まっている。恐らく想像していた形式じみた貴族ではない事に驚いているのだろう。
アナリアはレティシアの両手をスカートから引き離すと自らの両手に包み込んだ。
「あ、えっと」
「レティシア!私とっても貴方に会いたかったのよ!」
「ああ、は、はいあの」
「さ、もういいわ、貴方は出て行って頂戴ギルベルト。女だけで話を致します。ネネ、ネネ、ギルベルトを摘み出して。ああ、そうだわ、庭の草が結構生えてきていたから駆除するよう頼んでおいて、どうせ魔法で一瞬よ。さ、早く」
気がついた時には扉の前に追い出されており、更に侍女のネネに庭に案内をされていた。
まともに挨拶をさせなかった母の事を思い出し、ギルベルトはため息をついてしまう。レティシアは大丈夫だろうか。
アナリアは酷く好き嫌いが激しい人物だ。
もし何かあれば泊まることも許されずに追い出されてしまうことだろう。
レティシアは人をわざと怒らせるような事をする人物ではないと知っているが、だが、アナリアは彼女にとって利がある相手や認めた相手以外はあっさりと自分の興味から外してしまう。
万が一にでも追い出されてしまっても素晴らしい宿に泊まろうと心の中で決めた。
何故か手作業で雑草の駆除をさせられ、夕食の時間になった時、レティシアの顔を伺ったが何も得ることは出来ずに夜になってしまった。
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