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書き終えて寝落ちしてました。。
「では、そこの髪が赤い人間はドラゴンだと言うのですか!!」
多くの人間がその広場に集まっていた。
紙とペンを持った記者たちがより良い記事を書こうと様々な質問を投げかけてくれる。
全てに答える必要はなかった。
数多く問いかけられる中から必要な物だけを選出して答えて行けばこちらのシナリオは遂行されるだろう。
『あの有名な魔剣士であるギルベルト・ファン・ザヘメンドが、なんとドラゴンを手懐けた』
それは、少し前に流行っていた、『噂のもうひと組みの運命のパートナーがドラゴンを倒した』時よりも大きな事件として取り扱われ、ギルベルト様への対応もより慎重となった。
すぐそばに立っている私の存在など、道端に転がる石ころくらいの存在感しかなく、誰も私に対しては反応を起こしていないことも私の計算のうちである。
誰もが思っているはずなのだ、その石ころを側に置く理由は何か。
存在感が無いのに、なんとなく気になる存在と言うのは、この大きな事件の前ではどうしても聞きにくいのだろう、私は堂々とした直立の体勢でギルベルト様の側を頑なに離れることはしなかった。
ここまで手懐けたという事柄が大きくなってしまうと、その前の『運命のパートナー』は一体何をしたのかも取り上げられることは目に見えていた。
だが、その2人をギルベルト様が介抱していたら人様にはどう、写るものだろう。
さらに、赤髪の男が火を吹きながら『この2人が操られ、かわいそうに思って幻想を見せたのだ』と語ったら?
保護していた貴族が先に疑わられる事は必須、怪しいことを毎日のように実験していたら、もう隠す事はできないだろう。
数日後には、ギルベルト様が通っていた学園の学園長は捕まるだろうという話を記者たちがしていたので、もしかしたらドラゴンを討伐したと偽りの映像を感じた瞬間に、自分たちが養っていたと公表でもしたのかもしれない。
どちらにしろ、法外なことを行っていた事は事実であり、逃げる事はできない。
「このドラゴンも手懐けたというより友人になったに近いんだ、気まぐれを起こすかもしれないから、下手な行動は控えるように」
そんな事をギルベルト様が発すると、途端に取り囲んでいた人の群れが下がった様子を目撃してクスリと声を漏らすと、ギルベルト様に睨み付けられた。
だって、仕方ないでは無いか。みんなが一気に引きつった顔になったものだから、と言い訳を内心で唱えていると、ギルベルト様が先ほどよりも大きな声でこう宣言する。
「まさか、彼女にここまで助けられるとは思わなかった。さすが我がパートナーと言わざるをえないよ」
「当たり前ではありませんか、だって、私たちは運命のパートナーなんですよ」
「そうだね、最近婚約もしたから、より仲を深められたらいいな」
勇者の魂はなくなってしまった。
だから今相性診断を行ったとしても100%ではない可能性がある。
その前に、記者の人たちにそれっぽい噂を広めてもらおう作戦。
シナリオの、まず一歩だ。
お読みいただきありがとうございます!!