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「『物語の終焉』とは一体何ですか」
「終焉は終焉だろう、終わりという事だよ」
人間には終わりがなければならない。それは、どんな性質の人間でも同じこと。
エターナル姫は同じ魂の中で何度も意識を取り戻し、同じような人生を楽しんで使命を全うすることもなく毎回終わっていくだけだった。
本来の使命を与えられた人生を彼女が乗っ取り、全てを台無しにして来ただなんて、本来あってはならないことである。
だから、ある程度の期間を置いて、度々物語の終焉という使命を持った聖女の魂が生まれて来ていた。
その聖女たちは皆魔力が少なく、勇者のパートナーとして見つかるまで時間がかかる。
パートナーになる前に恋人たちを作っている場合が多く、それを裏切らないようキスなどの行為も起こりにくい。
2人が出会わなかった時もあるようだ。
だが、結局魂にはそのまま呪いも魔法もかかったまま生まれ変わっていた。
この世界は、一時的に迷走の世界へと陥ったのである。
「という事だ」
「いえ、全然分かりませんけど」
「なぜ分からんのだ、こんなにも丁寧に教えてやってるのに」
「教えてくれたのは今までの世界だけで、物語の終焉の意味は全く伝わってこないじゃないですか」
アカは、まるで今までの歴史を物語のように語っていた。
今までのこの数千年にわたる勇者と聖女の魂の性質のせいで狂い始めた世界。
歴史書に書かれている素晴らしい世界とは違う、よく深く生々しいその世界の話は、確かにためになる内容も含まれていた。だが、私が知りたいことはそこでは無い。
私たちの、この先の事が知りたいだけだった。
私の使命が今の状態で完全に達成されているのであれば、今後の生活で、聖女だのなんだのに振り回されることは無いのかどうかを一番に知りたいのである。
別に今までの聖女や勇者たちのことは結局はどうでもよい。
なるほど、私はやはり、聖女の傲慢さは引き継いでいるのか。
自分だけ良く過ごせるのであれば何も問題ない、そう思っているなんて、まるで『聖女』ではないか。
「なぜ今まで魔王と勇者の魂を引き剥がすことをしなかったのですか?」
「一度、魔王の魂を消したこともあったが、それでは結局変わらなかったのだよ。そして、選択できるのは勇者と聖女のみだった」
「……では、私たちが答えを出さなければ、進まなかったということですか?」
「そうだな」
「では、今回の結果は」
「今までにない終わりだった、そのもう1人ついている霊も、そろそろ還る頃あいだ」
「……レシー!!」
気がつけば、レシーの声が途切れ途切れにしか聞こえなくなっていた。
いつもなら感じる気配も全く近くにかんじない。
『レティシア……』
「レシー?消えるの?」
『やっと、……終わるの……ね?』
「……」
『ふふふ、もう悲しまなくて……済む、ありがとう』
そう、声が聞こえてから、もう彼女の声を聞けることはなくなった。
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