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アカはそう口に出した瞬間、ギルベルト様の中に手を突っ込むと何かを唱え始めてしまった。
今のは許可を取ったのではないか!と聞きたいがギルベルト様はそれどころではない顔をしている。
そうだろう、突然胸のあたりに手を突っ込まれたら誰でも驚くだろうし、死が頭を過ぎるはずだ。
しかし、突っ込んでいる体からは血のようなモノは吹き出して来ないので、きっと物理的に突っ込んでいる訳ではないのかもしれない。見た目はとてもグロいが。
アカがぼそぼそとした呟きを止めると、フロワージェさんの方に顔を向ける。
彼女も何かを察したのか、瓶のようなものを持った状態で近寄ってきた。
これは、本当に魂の燃えた瞬間を捕まえる……これで捕まるのか定かではないが、きっと目論見はそれっぽいなと思っている。
「燃えろ」
アカがそう発した瞬間、ギルベルト様の体は金魂のように光輝き、直後、青白い炎が上がった。
その瞬間、フロワージェさんが瓶をかざすと吸い寄せられるように煙がその中に吸収されていった。
「ふふふふ、あははは!これであなたは私のものね!!」
フロワージェさんはそう叫ぶと、煙となって消えた。
彼女自身も煙をなるとは思わず驚いてしまう、慌ててギルベルト様の方を見ると彼も驚いた顔でその場に立ち尽くしている。
「ギ、ギルベルト様?」
「あ、ああ……終わったのか?」
「終わったぞ、勇者の魂はあのエルフに連れて行かれた」
上を見上げながらアカはにこやかな顔で笑っていた。
ギルベルト様の中にまだ手を突っ込んでいるので早く戻して欲しいものだが、先ほどの煙のこともあるし本当に燃やされてしまったのだろう。
あまりにあっけない終わりに、全く現実味を感じられない。
「レシーは?」
『私は残ってます。でも、なんだか頭がぼーっとして……』
アカはニコニコと笑顔をこちらに向けると、ゆっくりと頷いている。
「何か原因があるのですか?」
「お前たちの全ては勇者が元となって生み出されたものだった。勇者の魂が悪の原因となり、そこから呪いが生まれ、歴代の『運命のパートナー』たちは苦労を強いられていた。だからお前には特殊な使命が与えられたのだ」
「そうだ、私が暗いって言われた理由を教えてくださいよ」
チョコレートの分を説明を求める。
アカはチョコレートをパクパクと食べ始めると、しばらく黙ってしまった。
「アカのドラゴン。説明をしてくれませんか」
ギルベルト様がそう呟くと、アカはため息をついて仕方ないとばかりに説明を始めた。
「今回のお前の使命は、『物語の終焉』だったのだよ。レティシア」
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