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フロワージェさんも付いてくると聞かないため、一緒にドラゴンの元へと戻ってきた。
今回は全く追われることがなかったので数刻前よりも疲れはない。
とても気持ちよく眠っている人間姿のドラゴンを突いて目を覚めさせると、多量のチョコレートを見せつける。
匂いをかいだアカは、辺りを見渡した。
「フロワージェではないか」
「お久しぶりです、アカ」
「はは!世界一気持ちの悪いエルフに名前を呼ばれるというのは、こそばゆいな」
「ふふふふ」
不吉な会話はしないで欲しいが、昔からの付き合いということで、ああ見えて仲が良いのかもしれない。
そう思わないと背筋が凍るような恐怖で体が固まりそうだった。
現にエミリは「なんてやつを連れてきたんだ」という目でこちらを見ている。
「フロワージェからのチョコレートなど、何が入っているか分かった物ではないな」
「あら、別になんの興味もないドラゴンなどに手を込めたチョコレートなど作りませんよ」
「は、そう言って痺れ薬を入れてきたことを忘れているとでも?」
「ふふ、私の言葉など数秒で忘れてしまうと以前お話になっていたものですから」
どんどんと空気が重くなる空間に、どうしようかとギルベルト様を見上げると、彼もどうしたものかという目をしてこちらを見てきたところだった。
多分このまま誰も何も言わなければずっとあのように口論が続いてしまいそうである。
「とりあえずチョコ持ってきたので、質問続けても良いでしょうか」
「安全なチョコレートだと分からないのに話すことはできまい」
「はぁ、私が食べてみますから」
アカに渡していたチョコレートの入った紙袋を掻っ攫うと、チョコを1つ取り出した。
ちらりとフロワージェを見ると、ニコニコとした顔を変えることもしない。
「レティ……」
「な、何かあったら、魔法でなんとかしてください」
「わ、分かったよ」
今回は、勇者の魂が目的なのだからきっと何もしていないに違いないのだ、多分、絶対。
パクリと口へチョコレートを運ぶと、少し苦めのダークチョコレートで、ねっとりと甘すぎないそれが口の中で溶けていった。
少し経っても体調が変わることもない。
至って普通のチョコレートのようだ。
「ほら、何もありませんよ。情報いただけますよね?」
私がアカを見ながらにこりを笑うと、観念したのかため息を吐きながら「わかった」と答えてきた。
まず、最終的に勇者の魂は燃やしてもらいたいと伝えると、何かを納得した顔をしたアカは、ギルベルト様の方へ近づいた。
「な、なんでしょうか、アカ」
「先に燃やしてしまえばよいだろうと、思ってな」
「色々聞いてからでは不都合でもあるのですか?」
「いや?そこのエルフが先に帰るのではないかと思っただけだ」
確かに、間違っていない。
用事は勇者の魂が燃え、燃えた時に発生する何かを回収するために来ているのだから。
「では、燃やして構わないか?」
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