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急に聖女にさせられた自分は、どうして自分にこんなお告げを降したのかに対して憤りを覚えた。
エルフの中では異質な存在となってしまうことはわかり切っていたため、もし今の聖女の性質を正すことができたならば神に元に戻してもらう。
そして再びただのエルフに戻りたい、フロワージェはそう思っていた。
しかし、魂の性質と使命が先行して無理やり勇者の事を愛する自分はいたく気持ちが悪く、このままではいけないと、ふらふらと考えが上下すれば、精神的に不安定に陥るまで時間は掛からなかった。
共に行動する勇者の行動は常に女性には優しく、恋をしたことがなかったフロワージェは誘惑に幾度となく負けてしまった。
勇者はそこにつけこみ、いつしかフロワージェはただ勇者を愛して求めるだけの人間になってしまっていたのである。
性質を正すようにいく先々で村人等にはいくらでも優しい言葉はかけることができた、だが、あっという間に人間のような醜い思考が自分を支配してると気がついた時にはすでに自分は【居ない】存在になっていた。
それは勇者との間でその行為が行われたあと、人間で言う処女ではない存在は、エルフの中では結婚相手以外にすることはあってはならない。エルフの外見はしていても心は人間そのものであると気がついたフロワージェは、すでに戻れないエルフには興味はなくなっていた。
これは、どんどん汚れていく聖女の魂を汚し尽くしてから自分が本物の聖女になるしかないという思考が支配していた。
エルフが持つ力を使って、現在本当に聖女だと定められた自分がその位置にいるべきだと示さなければならないと思った。
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「という事で、私はある時まで自分自身も黒く醜く汚れていることに気がつくことができなかったのです」
「それが、なぜ「という事で」という言葉になるのかは分かりませんが、なるほど?つまり現在この世界には聖女性質も持つ魂がいくつか存在しているということでしょうか?」
「ええ、神が私の魂を汚れていると判断したのであれば他にも生み出した可能性はあります。でも、最後まで意地の悪かったエターナル姫によって、現在の貴女の魂が蘇った時にのみ、勇者は恋愛感情が生まれるように仕組まれ、パートナー制度なるものを作られ、現在のこじれた状況になっていると言っても過言では無い状態なのです」
はて、フロワージェさんが説明してくれいていた内容が途中で切られていると思ったのは私だけだろうか。
力づくでも勇者を奪おうとしていると宣言されて、なぜこうも穏やかに話を続けているのかをどこかのタイミングで問いたいところだ。
彼女はまだ説明が続いているので私は相槌を打って話を聞く事で恐怖を紛らわせる事しかできないでいた。
「つまり、貴女の方が別の人に恋をしたとしても、勇者と無理やり付き合う事となるのです」
「どういう事ですか?」
「レティシー姫は、魔王の性格がとても好みでしょう?毎度外見が良く、好みの性格をしていたら。レティー姫霊が表に出てきてしまう、そうすると、本来の意識は朦朧とし始め最後に自分の意識を復活させる呪いを魂にかけているんです」
「自分というのは、エターナル姫?」
「そうですよ。けれど意識だけしか甦らせることができないから、たまに我に帰る本来の人間との口論になっている場面を見たことがあります」
「なんとまぁ、二重人格みたい」
「まぁ他にもいろいろ、呪いやら魔法やらを実験で使われているので……」
「それで、結局私には何を伝えに来たのですか」
「勇者の魂を燃やしたら、その時に出る煙をもらいにきたのです」
勇者の魂が消されると聞いて、やってきただけらしい。
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