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「いつから学校に通う事になっているのですか」
「3ヶ月後だ。一応貴族のしきたりなど学んでおいた方がいいからね」
そう言ってギルベルト様は元いた学校の方に再度通い始めた。
私には侍女はいないが、現在、世話役としてギルベルト様の3人の侍女がローテーションで残ることとなっている。彼女達は主に、私に3ヶ月着いてくれる講師様達の相手をするためなのだろう。
講師様達は一応お金を払われて来ているためか、嫌な顔はせず、しかし、こんな事も知らないのかという言葉を至極丁寧な言葉で教えてきてくれた。
つまり、小規模の学校を体感せよということなのか。
侍女が生徒で講師が教師。
そして、ギルベルト様はそれがさも当然のようである。
少し、同情していた。
これほどの魔法使いにパートナーが居ないなんてかわいそうだなと思って、来てあげた気持ちもどこかにあった。
蓋を開けたらこれである。
結局彼は『パートナー』はさほど求めていなかったのではないか。と思い始めた。
それならば私がここにいる必要性は皆無。
だが、私だけ我慢すれば私も私の家族も今後の生活は安泰なのだろう。
なら、それなら、もう一回だけ頑張ってみても良いのかもしれない。と、思う。
______バタン
ギルベルトはここ数日見かけていないパートナーの顔を見るために自分の部屋とレティシアの部屋の間にあるリビングで待っていたはずであった。
結果は、外から戻ってきたレティシアに一瞥され、近づくとどうもという声と共に扉が閉まる音が目の前で響いたのみだ。名前を呼んだ瞬間に視線を睨む様に向けられたのでそれ以上の言葉は口の中で飲み込まれてしまっていた。
侍女からは前と変わりはないと聞かされていたし、講師達からも普通に学んでいるという連絡が届いていた。
長く休んでいた学校では自分が片付けなければならない業務が残っており、最近はそこに構い切りだった事が彼女の怒りに触れたのだろうか。
生活は何不自由なく送れるように整えているというのに、一体何が不満なのだろうか。
もし後にウジウジと文句を言ってくる女なのであれば、念願のパートナーであっても、ここに連れてくるべきではなかったのかもしれない。
ギルベルトにとって基本的に『女』というのは一度限りの交わり位が1番楽しめると認識している。一度楽しげな会話を交わした後それ以上を求めてくるなど面倒でしかない。
だから、すり寄ってくるだけの女は適当に遊んでも問題ないと思っていた。
笑顔を向けて、優しい言葉をかけ、落とし、ヤって面倒がないように忘却の魔法をかけてリセットする。お陰で現状は行為の部分が切り取られ、ただの優しい男として世間一般には知られているはずだ。
やっと見つけた『パートナー』はあっさりした性格のようだったし、面白い反応をする人物だったから懐かせてみたいと連れ帰ってきたが、やはり彼女も『女』だったのかもしれないと思うと少し億劫である。
「ギルベルト様、アナリア様からお手紙が届いております」
「ああ、ありがとう」
にこりと笑えば侍女は少し頬を染めて下がっていく。
アナリアとは母の名前だ。あまり個人から手紙が届いたことが無かったので不思議に思いながら中身を開ける。
_そろそろパートナーを見せなさい。来週から1週間はナリアスタはおりません_
簡潔にそれだけが紙にのっていた。
来週から父が家には居ないらしい。
ギルベルトは、母に逆って良いことがあった試しがないと思い返して、少し面倒だがこれは行くしかないなとソファから立ち上がった。
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