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アカにギルベルト様の本を尋ねると、チョコレートを持ってこないと何も答えないと言ってきた。
「じゃあ、チョコを20枚買ってくるから、どうしたらこの意味の分からない現象の解決方法を的確に教えてください」
「ああ、問題ない」
「じゃあ、変装して行きましょう」
前回理由も分からず追われたため、服装をみすぼらしいものに変え、準備万端でお店の前にきてみると、フロワージェさんが待っていた。
彼女は以前と同じ服装で、同じ表情をしており、まるで時間が過ぎていないように思えるほどだ。
お店の中に入る前に呼び止められたので、道脇にそれて人通りが少ない場所まで一緒にくるようにと告げられる。
あの店にくることを初めから知っていた様子に、私は何が起きているのかを考えた。
本当に人がいない通りに私とギルベルト様と3人だけ。
「ふふ、お待ちしておりました」
「全く待っていないですが、一体どんな案件でこちらに?」
フロワージェさんは微笑みを作りながら紙袋を手渡してきた。
恐る恐る中を開けると、チョコレートが大量に入っている。
「え?これ……」
「アカはこれが好きでしょう」
「フロワージェさん、アカと知り合いなんですか?」
「ええ、もちろん。彼とは昔からの知り合いです」
笑みを絶やさない彼女は、そうそう、と言って口元に手を持って行った。
「以前お会いした時2回ほどありますが、全てをお話しすることができませんでしたね。今レティシー姫の霊体もドラゴンの元におりますし丁度よい、少しだけ私の話にもお付き合いいただけませんか」
「……分かりました」
ギルベルト様と顔を合わせると、フラワージェさんの意見に同意した。
何かあればギルベルト様に守ってもらえれば良いだろうし、今の彼女からは特段危害を加えてくるようには見えなかったからである。
一番はじめにギルドの受付をやっているエルフ、フローナさんの体から話しかけられた時と同じよな声のトーンに、何となく記憶が蘇る。
あの時も今と同じように落ちゆく雰囲気がある。
「では、私の魂の性質からお話をいたしましょう」
エルフには人間とは違い、魂に性質はない。
そもそも魂が死ぬというは感覚ないため、性質も、使命も存在していない。
だが、フロワージェはある日、神からのお告げがあった。
人間でいうところの「聖女」の魂がだんだん汚れてきている。
今後は、汚れることの少ないエルフの命を聖女とする
フラワージェはあまりに驚き、他のエルフには話すことができなかった。
そもそもエルフは他の種族が苦手なのだから、人間の魂に近い仕組みを付けられたなど話したら何をされるか分からない、最悪全体から非難されてしまう。
そう考えたフロワージェは、まず関係のある人間の調査のため、聖女と呼ばれている姫元へと足を運んだのである。
その姫がエターナル姫であった。
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